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アクアフィリング豊胸の失敗とは?しこり・後遺症のリスクと除去を解説
2026.09.04
アクアフィリングの「しこり」「後遺症」が心配な方へ

数年前に受けた注入豊胸のことが、ふとした瞬間に気になる。胸に硬い部分がある、左右差が出てきた、痛みや張りを感じる。そんな不安から「アクアフィリング 失敗 しこり 後遺症」と検索してたどり着いた方が多いはずです。当院の患者様でもアクアフィリングの後遺症で悩まれている方が非常に多く、年々増えている感じです。
アクアフィリングは、日本国内では2015年に豊胸目的で導入された注入剤です。その後、国内外で合併症の報告が積み重なり、2019年4月25日には日本形成外科学会など4団体が共同声明を出しました。現在は学会として推奨されていない施術です。
この記事では、公的機関・学会・査読つき論文で確認できた情報だけを使い、何が起きるのか、いつ起きるのか、どう対応するのかを整理します。不安をあおるためではなく、次の一歩を落ち着いて決めるための材料としてお読みください。
- アクアフィリングがどんな材料で、なぜ学会が推奨しなくなったのか
- 報告されている合併症の種類と、その発生件数の実際
- しこりや変形が「何年後に」出てくるのか(遅発性のリスク)
- 吸収される・放置してよい、といった誤解の正しい読み替え方
- 受診前に確認したいチェックリストと、費用の考え方
アクアフィリングとは何か(仕組みと特徴)

成分は「98%の生理食塩水+2%のゲル」
アクアフィリングは、注射で胸のふくらみを作るタイプの充填剤です。JPRAS Open誌に掲載された2024年の系統的レビュー(Hedströmら)によると、この製品は0.9%塩化ナトリウム溶液98%と、コポリアミド2%からなる親水性ゲルと説明されています。同じ組成の製品が、アクアフィリング、ロデスライン(Los Deline)、アクアリフトといった名称で流通してきました。
一方で、Aesthetic Plastic Surgery誌の2020年の報告(Chalcarzら)は、製品説明では「98%生理食塩水と2%ポリアミド」とされるものの、韓国の規制当局は2%ポリアクリルアミドとして扱っていると記しています。成分の呼び名そのものが資料によって食い違う点は、この施術を考えるうえで押さえておきたいところです。
「非吸収性充填剤」という位置づけ
4学会の共同声明が対象としたのは、まさに「非吸収性充填剤」です。非吸収性とは、体内で分解・吸収されずに残り続けるという意味になる。米国のPlastic and Reconstructive Surgery Global Open誌の2025年の報告(Toyamaら)も、アクアフィリングを非吸収性のポリアクリルアミドゲルとして扱い、長期の合併症リスクを指摘しています。
なぜ「失敗」と語られるのか、報告されている合併症

個人の体験談ではなく、論文としてまとめられた数字を見ると輪郭がはっきりします。前述のHedströmら(JPRAS Open, 2024)は、16件の研究(症例報告14件、後ろ向きコホート2件)に含まれる196人の女性、合計333件の合併症を集計しました。
| 報告された合併症 | 件数(全333件中) | 割合 |
|---|---|---|
| 乳房のしこり・結節 | 130件 | 39% |
| 痛み | 92件 | 28% |
| 炎症・感染 | 43件 | 13% |
| 乳房の変形 | 35件 | 11% |
| 充填剤の移動(マイグレーション) | 27件 | 8% |
最も多いのが、まさに検索されている「しこり」です。同レビューでは、合併症を生じた患者の約92%が外科的な処置を必要としたと報告されています。
しこりの正体は何か
硬く触れる部分は、単に注入したゲルが固まったものとは限りません。異物に対する体の反応、いわゆる異物肉芽腫や線維化(組織が硬く置き換わること)が関わります。Chalcarzらが除去手術を受けた4人の組織を調べた研究では、Tリンパ球・Bリンパ球・マクロファージの発現が確認され、目に見える症状がない人でも炎症反応が起きていたと報告されました。
ゲルが胸から離れた場所へ移動することがある
非吸収性の親水性ゲルは組織のすき間を伝って広がります。Indian Journal of Plastic Surgery誌の2022年の症例報告(Gierejら)では、35歳の女性が左右150mLずつ注入を受け、約2年半後に左腕のしびれと痛み、肘付近のふくらみを訴えました。画像検査でゲルが前腕から手根管付近まで移動していたことが判明し、内視鏡を用いた摘出が行われています。
後遺症はいつ出るのか、遅発性という難しさ

「入れた直後は何もなかったから大丈夫」と考えるのが最も危ういところです。Hedströmらの集計では、合併症が出るまでの期間の中央値は注入から18か月、範囲は1か月から60か月でした。短期間で起きた合併症は1件のみと報告されています。
さらに長い経過をたどる報告もある。Gierejらの文献レビューでは、注入から合併症発症までの平均が6.1年とされました。Toyamaらの2025年の報告では、2017年から2023年までの7つの研究でアクアフィリング注入後の感染27例(うち敗血症1例)がまとめられ、その多くが注入から2〜6年後に現れたと記されています。同報告の症例自体も、注入から6年後の敗血症でした。
男性の症例も報告があります。Life誌の2024年の報告(Fastら)では、51歳の男性が注入から10年間問題なく経過した後、突然の痛み・硬結・腫れ・左右差を発症しました。9日間で3回の手術を要し、左右あわせて約700mLの充填剤が除去されています。
「後遺症」という言葉をどう受け止めるか
後遺症とは、治療が一段落した後にも残る症状や変化を指します。
ゲルの除去自体ができても、乳房の形の変化や瘢痕(傷あと)が残ることがある。令和3年度の厚生労働科学研究補助金による分担研究「美容医療における合併症実態調査と診療指針の作成及び医療安全の確保に向けたシステム構築への課題探索」では、重度後遺症として最も多かったのは「ケロイド・肥厚性瘢痕、重度の瘢痕」で13件でした。
よくある誤解と、見落としがちなポイント

誤解その1「体に吸収されるから、いずれ消える」
4学会が2019年に出した共同声明のタイトルは「非吸収性充填剤注入による豊胸術に関する共同声明」です。
吸収されない材料として扱われている、というのが行政・学会側の整理になる。Fastらは論文の中で「アクアフィリングゲルに対する解毒剤は存在しない」と明記し、対応は外科的な除去になると述べています。溶解注射で消えるヒアルロン酸とは前提が違います。
誤解その2「症状がないなら検査もいらない」
Chalcarzらの研究は、見た目の症状がない人でも組織レベルの炎症が起きていたことを示し、「症状がない場合であっても、こうした患者全員に画像検査を行うべき」と結論づけています。日本美容外科学会(JSAS)が2019年の共同声明に付した補足説明でも、合併症のない方に一律の除去は不要としつつ、合併症が認められた場合は誠意をもって適切な治療を行うべきとされました。無症状イコール放置でよい、ではなく、無症状だからこそ定期的に画像で確認する、という読み替えが要ります。
見落としがちなポイント、乳がん検診との関係
Archives of Aesthetic Plastic Surgery誌の2024年の症例報告(Yoonら)では、9年前にアクアフィリング注入を受けた33歳の女性が、乳がん検診のマンモグラフィ後に下腹部のしこりと乳房の左右差を自覚しました。画像では充填剤が下腹部と左鼠径部へ移動しており、超音波ガイド下の吸引と既存の手術瘢痕からの切除で対応されています。
著者らは、コポリアミド充填剤を入れている方がマンモグラフィを受ける際には、合併症について十分な説明と同意が必要だと注意を促しました。
検診を受けないという意味ではありません。検診を受ける前に、注入豊胸を受けた事実と時期を必ず申告し、撮影方法を相談する。ここが抜けやすいところです。
国内外の学会・行政はどう対応してきたか

| 時期 | 主体 | 内容 |
|---|---|---|
| 2015年 | — | アクアフィリングが豊胸目的で日本に導入(Toyamaら, 2025) |
| 2017年 | 日本美容外科学会(JSAS) | 「少なくとも現時点において、アクアフィリングならびにアクアリフトを用いた豊胸術を推奨することは出来ない」 |
| 2019年4月25日 | 日本形成外科学会、日本美容外科学会(JSAPS)、日本美容外科学会(JSAS)、日本美容医療協会の4団体 | 共同声明「安全性が証明されるまで、非吸収性充填剤を豊胸目的で注入すべきでない」 |
| 2019年 | 日本美容外科学会(JSAPS) | 豊胸目的でのアクアフィリング使用を禁止(Toyamaら, 2025) |
| — | 韓国・ポーランド・イタリア | 豊胸目的での使用を禁止、または強く非推奨とする勧告(Hedströmら, 2024) |
この共同声明を受けて、厚生労働省は各自治体に通知を出し、消費者庁とともに説明と同意のための啓発資材が改訂されました。日本形成外科学会の会員向けページにその経緯が記載されています。
国内の実態調査でも名前が挙がっています。前述の令和3年度厚生労働科学研究の分担研究では、全3,093施設に調査を行い82施設から回答(回答率2.7%)、2021年度に美容医療関連の有害事象に対して実施された治療症例は合計333件、死亡例の報告はありませんでした。重度合併症では「異物肉芽腫、しこり形成」49件が最多で、有害事象の原因として自由記載で挙げられた製品のうち最も多かったのがアクアフィリング(8件)でした。
除去はできるのか、治療の実際
まず画像で状態を把握する
触診だけでは、ゲルがどこまで広がっているか分かりません。文献では超音波検査とMRIの組み合わせが用いられており、Chalcarzらも症状の有無にかかわらず画像検査を勧めています。Gierejらの症例では、MRIのT2強調STIR画像で腕の筋膜下に沿ったゲルの貯留が確認されました。
除去は簡単ではない
Hedströmらは、充填剤が乳腺組織の中にびまん性に広がるため完全な除去が難しく、複数回の処置を要することが多いと指摘しています。Fastらの男性例では9日間に3回の手術が行われました。Yoonらの症例では超音波ガイド下の吸引と切除が併用されています。「一回の手術ですべてきれいに取り切れる」と単純に考えないほうが、その後の見通しを立てやすくなります。
相談先の選び方
注入豊胸後のしこりや変形は、形成外科・乳腺の知識と画像診断が絡む領域です。施術を受けたクリニックが対応してくれる場合はまずそこへ、対応が難しい場合は形成外科専門医のいる医療機関へ相談してください。胸そのものではなく、体の別の部位のしこりや傷あとの相談であれば、BIOTOPE CLINIC 白金でも粉瘤やほくろの切除、傷跡修正といった形成外科の診療を行っています。気になる方はご相談ください。
受診前に確認したいチェックリスト
診察をむだにしないために、次の情報を思い出せる範囲でメモしてから受診すると話が早く進みます。
- いつ、どこで注入を受けたか(年月と施設名)
- 製品名(アクアフィリング、ロデスライン、アクアリフトなど)と注入量
- 症状に気づいた時期と、その後の変化(硬さ・痛み・熱感・左右差・皮膚の色)
- これまでに受けた検査と、その画像データの有無
- 授乳中・妊娠中かどうか、乳がん検診の受診歴
- 発熱や急な腫れがあるか(感染を疑う症状は早めの受診を)
カウンセリングでは、次の点を医師に確かめておくと判断しやすくなります。
- 画像検査で、ゲルがどこまで広がっているか
- 除去する場合の方法、想定される回数、傷あとの位置
- 除去しない選択をした場合の経過観察の間隔
- 合併症が起きたときの対応と、追加費用の扱い
費用と自由診療の考え方
注入豊胸そのものも、その除去も、原則として公的医療保険の対象外である自由診療です。金額は施設ごとに設定され、除去は状態によって手術の規模も回数も変わるため、一律の相場を示せる性質のものではありません。この記事では確認できた一次情報がないため、具体的な金額は記載しません。
金額以外に確認しておきたいのが、健康被害が起きたときの救済制度の扱いです。PMDA(医薬品医療機器総合機構)の医薬品副作用被害救済制度のページには「美容医療に使用される医薬品の中には、救済制度の対象にならないものがあります」と明記されています。未承認の医薬品・医療機器を用いる自由診療については、厚生労働省の医療広告ガイドラインに沿って、医療機関のウェブサイトで承認状況やリスクを示す運用が定められています。カウンセリングの場でも、その説明があるかどうかを一つの目安にしてください。
よくある質問
- Q. 今のところ症状がありません。それでも受診したほうがよいですか。
- 症状がない方に一律の除去が必要とはされていません。ただしChalcarzらの研究では、目に見える症状がない人でも組織に炎症反応が確認され、全員に画像検査を行うべきだと結論づけられています。定期的に超音波などで状態を確認しておく方針が現実的です。
- Q. 注入してから何年も経っています。もう安心でしょうか。
- 時間が経てば安全になる、とは言えません。合併症発症までの期間は中央値18か月、最長60か月という集計があり、平均6.1年という文献レビューや、10年後に急性の炎症を起こした症例報告もあります。経過が長いほど油断しやすい点にご注意ください。
- Q. 乳がん検診は受けても大丈夫ですか。
- 検診を避けるのではなく、注入豊胸を受けた事実と時期を必ず事前に申告してください。マンモグラフィ後に充填剤が下腹部や鼠径部へ移動した症例が報告されており、著者らは事前の十分な説明と同意を促しています。撮影方法や超音波の併用について相談しましょう。
BIOTOPE CLINIC 白金へのご相談
気になる症状・治療法は、形成外科専門医・苅部医師にカウンセリングでご相談ください。お一人おひとりの肌・お悩みに合わせて、最適な治療法をご提案いたします。
所在地: 東京都港区白金 / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
まとめ
アクアフィリングをめぐる「失敗」「しこり」「後遺症」は、体質や運の問題として片づけられるものではありません。非吸収性の充填剤が体内に残り、数か月から10年という幅で炎症・硬結・変形・移動を起こしうる。それが論文と学会声明から読み取れる姿です。
今できることは三つに絞れます。注入の記録を集めること、症状の有無にかかわらず画像で現状を確認すること、そして除去する場合もしない場合も、経過を見てくれる医師とつながっておくことです。焦って結論を出すより、まず状態を「見える化」するところから始めてください。
胸以外の部位のしこりや傷あと、皮膚のできものについて気になる方はカウンセリングでご相談ください。BIOTOPE CLINIC 白金(港区白金)でもご相談いただけます。
References
- 日本美容外科学会(JSAS)『2019年4月25日に行われた「非吸収性充填剤注入による豊胸術に関する共同声明」についての補足説明』2019年 出典
- 日本形成外科学会『非吸収性充填剤注入による豊胸術に関する共同声明(2019年4月25日)』2019年 出典
- 厚生労働科学研究成果データベース『美容医療における合併症実態調査と診療指針の作成及び医療安全の確保に向けたシステム構築への課題探索』厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)令和3年度 出典
- Hedström A, et al. 『Complications after breast augmentation with dermal fillers containing copolyamide: A systematic review』JPRAS Open、2024年 出典
- Toyama S, et al. 『Sepsis 6 Years After Breast Augmentation With Aquafilling: A Case Report and Literature Review』Plastic and Reconstructive Surgery Global Open、2025年 出典
- Chalcarz M, Żurawski J.『Injection of Aquafilling® for Breast Augmentation Causes Inflammatory Responses Independent of Visible Symptoms』Aesthetic Plastic Surgery、2020年 出典
- Gierej P, et al.『Distal Hand Migration of Polyacrylamide Gel after Breast Augmentation: A Case Report and Review of the Literature』Indian Journal of Plastic Surgery、2022年 出典
- Fast A, Radtke C.『Long-Term Complications of Aquafilling Injection after Male Breast Augmentation: A Case Report』Life (Basel)、2024年 出典
- Yoon HM, et al.『Distant migration of copolyamide breast filler following mammography: a case report』Archives of Aesthetic Plastic Surgery、2024年 出典
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)『医薬品副作用被害救済制度』 出典
- 厚生労働省『医療法における病院等の広告規制について(医療広告ガイドライン)』 出典
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監修医師
苅部 淳
Karibe Jun
理事長
略 歴
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受 賞
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