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幹細胞培養上清液の効果と安全性は?リスク・国内規制と注意点を解説
2026.09.18
幹細胞培養上清液の効果と安全性を知る前に

「肌のハリや質感が気になる」「再生医療という言葉は魅力的だけれど、体に入れて大丈夫なのか知りたい」。
幹細胞培養上清液を調べている方は、期待と同じくらい不安も抱えているかもしれません。
当院でも長年行っていますが、情報が錯綜しており、混乱を招いている原因となっています。
幹細胞培養上清液は国内外のクリニックで投与が行われています。一方で厚生労働省は2024年7月の事務連絡で、有効性と安全性が示されて薬事承認を得た医薬品は、諸外国を含めて存在しないと周知しました。宣伝で目にする言葉と公的な位置づけの間には、見過ごせない差があります。
今回は、厚生労働省や日本再生医療学会の公表資料をもとに、幹細胞培養上清液の仕組み、期待されている効果と研究の現状、リスク、規制の動きを整理します。受けるかどうかを落ち着いて判断するための材料として役立ててください。
この記事でわかること
- 幹細胞培養上清液とエクソソーム、幹細胞治療の違い
- 期待されている効果と、ヒトでの研究がどこまで進んでいるか
- 日本再生医療学会のガイダンスが示すリスクと品質管理の考え方
- 2025年施行の法改正と、2026年に始まった規制見直しの議論
- カウンセリングで確認したいチェックポイント
幹細胞培養上清液とは(仕組みと特徴)

幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養した液の上澄みのことです。
細胞そのものではなく、細胞が培養液の中に分泌した成分を利用します。厚生労働省の事務連絡では、この上清液と、そこに含まれる可能性のある細胞外小胞などを「細胞の分泌物」としてまとめて扱っています。
日本再生医療学会のガイダンスによると、細胞外小胞(EVs)は細胞から分泌される小さな袋状の粒子です。組織の再生を促す成長因子や、細胞同士の情報伝達にかかわる物質を含んだエクソソームなどから成ります。
ただし、上清液に何がどれだけ含まれるかは、元になる細胞の種類や培養条件、精製の方法によって変わります。同じ「幹細胞培養上清液」という名前でも、中身が同じとは限らない点を覚えておきましょう。
エクソソームとの関係
「エクソソーム」という言葉も、培養上清液とセットで目にすることが多いはずです。学会ガイダンスは、細胞外小胞を大きく2つに分けて説明しています。
1つは、培養上清から手を加えずにそのまま採取する「天然型」です。もう1つは、精製した後に機能を付け加えたり、薬を包み込ませたりする「改変型」です。ガイダンスは、現状で利用が想定される間葉系幹細胞由来の天然型を中心に作成されています。
幹細胞治療・培養上清液・エクソソームの違い
| 項目 | 細胞を投与する治療 | 幹細胞培養上清液 | 精製したエクソソーム等 |
|---|---|---|---|
| 体に入れるもの | 培養などの加工をした細胞(細胞加工物) | 細胞を培養した液の上澄み | 培養上清などから回収・精製した細胞外小胞 |
| 再生医療等安全性確保法の対象か | 対象(提供計画の提出などが必要) | 対象外 | 対象外 |
| 認定再生医療等委員会の審査 | 委員会の意見を添えて計画を提出 | 受けない | 受けない |
| 国内で薬事承認を得た医薬品 | 製品ごとに異なる | なし | なし |
※厚生労働省の通知・政令説明資料、日本再生医療学会のガイダンスをもとに編集部で作成。
国内では「未承認」かつ「法の対象外」
再生医療等安全性確保法は、再生医療を提供する医療機関に、計画の提出や委員会での審査などを義務づける法律です。学会ガイダンスは、細胞外小胞等を医師の指示で調製して患者に投与する医療はこの法律の対象外で、認定再生医療等委員会の審査を受けないと説明しています。
厚生労働省は2024年7月31日付の事務連絡で、この医療は実施する医師・歯科医師の責任のもと、特に安全性に留意する必要があるとしました。あわせて学会ガイダンスを参照し、品質やリスクを管理するよう医療機関に呼びかけています。
国の審査の枠組みに入っていない分、医師自身が品質とリスクを十分に理解して安全確保に努めなければならない。これが学会の立場です。
期待されている効果と研究の現状

期待されている働き
培養上清液が注目される背景には、成長因子やサイトカインと呼ばれる、細胞の働きを調整する物質への関心があります。2021年に学術誌Frontiers in Cell and Developmental Biologyに掲載された系統的レビュー(複数の研究をまとめて評価する論文)は、間葉系幹細胞の培養上清について101本の研究を分析しました。
間葉系幹細胞は、脂肪や骨髄、臍帯血などから採れる幹細胞の一種です。分析対象は、傷の治癒(55本)、肥厚性瘢痕(9本)、皮弁の血流(4本)、発毛(15本)、肌の若返り(15本)、炎症性の皮膚疾患(3本)でした。
著者らは、動物とヒトの両方で、傷の治癒や発毛、肌の若返り、アトピー性皮膚炎、乾癬の改善がみられたと報告しています。こうした報告が、美容分野で期待を集める根拠の一つになっています。
ヒトでの根拠はまだ限られている
同じレビューは、培養上清を皮膚の治療に使う方法を「有望」と評価する一方、安全性と有効性を裏づける研究や、製造方法の標準化がさらに必要だとしています。元になる細胞は脂肪・骨髄・臍帯血などさまざまで、投与経路も静脈内、皮下・皮内注射、塗布とばらばらでした。
傷の治癒を扱った55本のうち、ヒトを対象とした臨床試験は1本にとどまっていました。研究の件数が多く見えても、ヒトでの検証はまだ少ないのが実情です。
日本再生医療学会も2024年12月の注意喚起で、iPS細胞の培養上清を使ったエクソソーム治療に触れています。
アンチエイジングなどを目的に高額で提供されるケースが増える一方、臨床的なエビデンス(科学的根拠)は十分に確立されていないという指摘です。
そのため、「〇回で若返る」といった具体的な効果をうたう説明には慎重になりたいところです。学会ガイダンスも、リスクの一つに「期待する有効性が発揮されないこと」を挙げています。
安全性とリスク、ダウンタイム

学会ガイダンスが示すリスク
日本再生医療学会の「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」は、細胞外小胞等を使った治療の一般的なリスクとして、次のようなものを例示しています。
- ウイルス・細菌・真菌などによる感染症の伝播
- 望ましくない免疫反応
- 不純物の混入
- 成分の特性の意図しない変化や、体内での望ましくない分布
- 重要な臓器・生殖系列・発生に対する毒性
- 期待する有効性が発揮されないこと
ガイダンスは、細胞外小胞を含む調製物は複雑で均一ではなく、感染の原因となる因子を不活化したり取り除いたりしにくいとも述べています。品質のすべてを検査だけで把握するのは難しいため、原料の段階から製造工程全体を管理するのが基本という考え方です。
製造工程と品質のばらつき
製造に関するリスクとして、ガイダンスは次のような例を示しています。原料からの感染因子の混入、アレルギーや拒絶反応を起こしうる物質の混入、ロットごとの品質のばらつき、保管中の品質劣化などです。
培地(細胞を育てる栄養液)の成分も確認したい点です。ウシ胎児血清などの動物由来成分を使うと、ウイルス混入の可能性に加え、ウシ血清由来の小胞が混ざって予期しない作用が出るおそれがあります。ガイダンスはこの理由から、動物由来成分を含まない「ゼノフリー」培地の使用を推奨しています。
有害事象(治療後に起きた好ましくない出来事)の原因を後から調べられるよう、投与したものと同じロットの検体や、製造・投与の記録を保管することも推奨項目に含まれています。
ダウンタイムと投与方法による違い
先のレビューで取り上げられた研究では、静脈内投与や皮下・皮内注射、塗布など、複数の投与方法が試されていました。ガイダンスは、投与方法や部位(局所か全身か)、投与期間(1回か繰り返しか)を、リスクにかかわる要因として挙げています。
同じ培養上清液でも、肌に塗るのか、点滴で全身に入れるのかで、考えるべきリスクは変わります。施術後の経過やダウンタイムの長さを一律に示した公的資料は見当たらないため、受ける方法ごとに担当医へ具体的に確認してください。
よくある誤解・見落としがちなポイント

誤解1:「幹細胞が入っているから再生医療そのもの」
名前に「幹細胞」とあるため、幹細胞そのものを投与する治療だと受け止める方もいます。実際には、細胞を育てた液の上澄みやそこに含まれる分泌物を利用するもので、細胞を投与する治療とは法律上の扱いも異なります。
厚生労働省の2024年12月の政令改正の説明資料でも、エクソソーム等は「細胞の分泌物」に該当し、再生医療等安全性確保法の対象にならないと明記されています。「再生医療」という言葉のイメージだけで、国の管理下にある治療だと判断しないようにしましょう。
誤解2:「国が効果や安全性を確認している」
厚生労働省の事務連絡のとおり、培養上清液やエクソソーム等を用いた医薬品で薬事承認を得たものは、諸外国を含めてありません。米国食品医薬品局(FDA)も2019年12月の注意喚起で、FDAが承認したエクソソーム製品はないと明言しました。あわせて、米国ネブラスカ州で未承認製品を投与された患者に重い有害事象が複数報告されたことも公表しています。
見落としがちなのは、法の対象になっている再生医療でも誤解が生じている点です。厚生労働省の2026年7月の資料では、ある報道が紹介されています。委員会で審査・届出された再生医療について、国が効果や安全性を評価したと考える人が多いという調査結果です。届出や審査があることと、国が効果を認めたことは別の話だと覚えておきましょう。
規制はどう変わろうとしているのか

再生医療等安全性確保法の改正法は2024年6月14日に公布され、2025年5月31日に施行されました。この改正で、細胞加工物を用いない遺伝子治療などが新たに法の対象に加わりました。一方で、エクソソーム等の細胞の分泌物は対象外のままでした。
改正法の附則第2条には、施行後2年を目途に、細胞の分泌物などを用いる医療技術について法の適用のあり方を検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずると定められています。
厚生労働省は2026年7月1日、「再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ」の第7回会合を開きました。資料では、検討事項の1番目に「エクソソームを含む細胞外小胞及び細胞培養上清の法令上の取扱い」が掲げられています。
同じ資料は、美容などの自由診療で妥当性が明確でない再生医療が増えていることや、安全性が十分に担保されない再生医療による健康被害が引き続き起きていることも課題として示しました。執筆時点で確認できた公表資料では、培養上清液を法の対象とする改正はまだ行われておらず、議論が始まった段階です。
向いている人・慎重に考えたい人
検討してもよい人
- 国内で未承認の治療で、自由診療として行われることを理解している
- ヒトでの研究がまだ限られ、効果が得られない可能性にも納得できる
- 使う製剤の由来や製造管理について、医師の説明を受けてから判断したい
- 承認済みの治療やほかの選択肢とも比べたうえで選びたい
慎重に考えたい人
- 確実な若返りや、病気の改善を期待している
- 病気の治療として、通常の治療の代わりに受けようとしている
- アレルギー体質や持病がある、または服用中の薬がある(必ず事前に医師へ伝えてください)
- 製剤の由来や品質について、十分な説明が得られない
FDAは、未承認製品を扱うクリニックについて、適切な治療を遅らせたり患者に害を与えたりするおそれがあると警告しています。病気の治療を考えている場合は、主治医に相談したうえで検討しましょう。
肌のハリや質感の悩みには、HIFUやピコレーザーなど医療機器を使った施術という選択肢もあります。BIOTOPE CLINIC 白金では幹細胞培養上清液もあわせてご相談を受け付けているので、気になる方はご相談ください。
費用の目安と受ける前のチェックリスト
費用は自由診療で全額自己負担
幹細胞培養上清液を用いた施術は、公的医療保険が使えない自由診療です。価格は医療機関が独自に決めており、製剤の種類や濃度、投与方法、回数によって変わります。
日本再生医療学会は、iPS細胞由来エクソソームの治療が高額で提供されるケースが増えていると注意を促しています。金額だけで決めず、見積もりの内訳と、1回あたりの量や回数の根拠を確かめましょう。
カウンセリングで確認したいこと
- 使う製剤が国内で薬事承認を受けていないものだという説明があるか
- 元になる細胞の種類(脂肪・臍帯など)と、自分の細胞か他人の細胞か
- 培地にウシ胎児血清など動物由来の成分を使っているか
- どの施設で、どのような品質管理の基準に沿って製造されたか
- 感染因子の混入がないことを確かめる品質試験の結果を示してもらえるか
- ロット番号や、製造・投与の記録が保管されるか
- 投与方法(塗布・注射・点滴)と回数、それぞれのリスク
- 期待できる効果の根拠と、効果が出ない可能性についての説明
- 体調が変わったときの連絡先と対応
日本再生医療学会も、治療を検討する人に向けて、科学的根拠に基づく治療かを慎重に確かめ、エビデンスや安全性、リスクについて医師に詳しく質問するよう勧めています。
よくある質問
- Q. 幹細胞培養上清液に幹細胞は含まれていますか。
- 細胞そのものではなく、細胞を培養した液の上澄みと、そこに含まれる分泌物を利用します。厚生労働省の資料では「細胞の分泌物」として扱われ、細胞を投与する再生医療とは法律上の扱いも異なります。
- Q. 幹細胞培養上清液は国に承認された治療ですか。
- 厚生労働省によると、培養上清液やエクソソーム等を用いた医薬品で、有効性と安全性が示され薬事承認を得たものは、諸外国を含めてありません。自由診療として、実施する医師の責任のもとで行われる医療です。
- Q. 今後、規制は変わりますか。
- 2025年5月施行の改正法の附則で、細胞の分泌物を用いる医療について、施行後2年を目途に法の適用のあり方を検討すると定められています。2026年7月には厚生労働省のワーキンググループで検討事項に挙げられ、議論が進められています。
BIOTOPE CLINIC 白金へのご相談
気になる症状・治療法は、形成外科専門医・苅部医師にカウンセリングでご相談ください。お一人おひとりの肌・お悩みに合わせて、最適な治療法をご提案いたします。
所在地: 東京都港区白金 / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
まとめ
幹細胞培養上清液は、幹細胞が分泌する成長因子や細胞外小胞に着目した施術です。研究では肌や発毛への作用が報告されている一方、ヒトでの根拠はまだ限られ、国内外で薬事承認を得た医薬品はありません。
再生医療等安全性確保法の対象外のため、品質とリスクの管理は提供する医療機関に委ねられています。製剤の由来や製造管理、リスクについて説明を受け、納得してから判断しましょう。
規制のあり方は2026年から見直しの議論が始まっており、今後変わる可能性があります。気になる方はカウンセリングでご相談ください。麹町皮ふ科•形成外科クリニック、BIOTOPE CLINIC 白金(港区白金)でもご相談いただけます。
References
- 事務連絡『幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について(周知)』厚生労働省医政局研究開発政策課、2024年 出典
- ガイダンス『細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)』一般社団法人日本再生医療学会(協力:日本細胞外小胞学会)、2024年 出典
- 注意喚起『iPS細胞由来エクソソームの臨床応用について(注意喚起)』一般社団法人日本再生医療学会、2024年 出典
- 通知『「再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律」の公布について』厚生労働省、2024年 出典
- 通知『「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令の一部を改正する政令」及び「再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」の公布について』厚生労働省、2024年 出典
- 会議資料『本ワーキンググループでの検討事項について(案)』第7回再生医療等安全性確保法の見直しに係るワーキンググループ 資料3、厚生労働省、2026年 出典
- 注意喚起『Public Safety Notification on Exosome Products』U.S. Food and Drug Administration、2019年 出典
- 論文『Mesenchymal Stromal Cell-Conditioned Medium for Skin Diseases: A Systematic Review』Montero-Vilchez T, et al., Frontiers in Cell and Developmental Biology、2021年 出典
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本記事と合わせて読みたい記事はこちらです。
- 幹細胞培養上清液の効果と安全性|再生医療の最前線を解説
- 幹細胞培養上清液(エクソソーム)とは?/効果やダーマペンとの組み合わせ治療について
- 幹細胞培養上清液による治療
- 幹細胞水光注射〜お肌の再生を〜
- 肌育治療とは?肌の土台を整える最新アプローチを解説
監修医師
苅部 淳
Karibe Jun
理事長
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