アフターピルは、性交後に服用して避妊する緊急避妊薬です。
早く服用するほど避妊率は高いですが、100%ではありません。
アフターピルで避妊する仕組みをお話しします。
しかしその前に、まず、女性の体について、知っておきましょう。

女性の体では、健康な人なら毎月1回、卵巣から卵子が排出されています。
排出された卵子は卵管を通りますが、この際、男性の精子と結びついたものが、赤ん坊の元とも言える受精卵です。
受精卵が子宮に移動し、子宮内膜で出来たベッドにうまく受け止められると妊娠。
卵子が精子と結びつかない、着床しなかった場合、使われなかった子宮内膜が体外に排出されるのが月経（生理）です。
体の周期は主に4つに分かれており、周期によって同じサイクルが繰り返されています。

卵胞期（増殖期）／低温期

女性の体の中には、生まれた時から卵胞という卵子の元が備わっています。
卵胞は成長しても、月々のサイクルを繰り返しても減るだけで、増えることはありません。
卵巣の中にある15個から20個の卵胞が、脳の真ん中あたりにある下垂体から分泌された卵胞刺激ホルモンにより成長。
成長に伴い、卵胞が分泌した卵胞ホルモンが、受精卵を受け止めるベッドとも言える『子宮内膜』を厚くし始めます。

排卵期

卵胞刺激ホルモン同様、下垂体から分泌された黄体形成ホルモンの刺激を受け、卵子が卵管に排出されます。
この時排出されるのは、成熟したいくつもの卵胞の中から選ばれた1個だけ。
15個から20個成熟し、それぞれが1つずつ排出するのではなく、その中のたった1個が排出されるんです。
排出しなかった卵胞は、生理がくれば吸収されて消滅します。

黄体期（分泌期）

卵巣から排出された卵子が、卵管で精子を待ちます。
卵子の寿命は12時間から36時間（平均は24時間）と言われ、卵管にいる間にしか精子と結ばれません。
この時期に、卵子を排出して残った卵胞が黄体に変化して黄体ホルモンを分泌し、さらに子宮内膜をぶ厚くします。

月経期（生理）

卵子が精子と結ばれなかった、または、うまく子宮内膜に着床しなかった場合、次の生理の準備をするために、子宮内膜が剥がれ落ちて体外に排出されます。
以上4つの周期は、女性の体の中で毎月繰り返されています。
次は、アフターピルがもたらす避妊の仕組みを解説しますね。

日本で処方されているアフターピルや、ほかの低用量・中用量ピルの多くが、卵胞ホルモンと黄体ホルモンを主成分にしたものです。
ホルモンを服用することによって、大きく3つの効果があります。

①排卵抑制効果

排卵抑制効果は、主に、排卵されていないときに作用します。

周期のところでお話しした通り
・卵胞ホルモン＝成熟した卵胞が分泌するもの
・黄体ホルモン＝卵子が排出された卵胞が黄体に変化して分泌するもの
です。
そのため、ピルでホルモンを摂取すると、脳が「卵胞が成熟し排卵した」と錯覚を起こし、ホルモンの分泌を抑えるなど、体から出す指令を排卵後のものにしてしまいます。
結果、排卵せず、卵子は卵巣の中に残ったままなので、精子と結びつくことがありません。

②子宮内膜の成長阻害効果

アフターピルには、子宮内膜を厚くしない効果もあります。
卵胞ホルモンと黄体ホルモンは、子宮内膜をふかふかと柔らかく厚くするのに、大切なホルモンです。
しかし、ピルを服用すると「ホルモンが十分にある」と錯覚し、ホルモンの分泌を抑えてしまいます。
ホルモンが足りず、子宮内膜が厚くふかふかにならないので、受精卵を受け止めらません。

③子宮内膜を着床しにくくする

着床するには、厚みも大切ですが、受け止める表面がキレイに整っていることも重要です。
卵の黄身をスプーンですくえますが、フォークのように出ている部分と引っ込んでいる部分があれば、受け止めるのは難しいですよね。
卵胞ホルモンと黄体ホルモンは、本来、体のサイクルに合わせてゆっくりと分泌され、子宮内の量が増えていきます。
それに併せて、子宮内膜もゆっくりと整いながら厚みを増していきますが、ピルを服用すると、薬で一気に濃度を高めるので、子宮内膜も乱れてしまうことに。
結果、子宮内膜が受精卵を受け止めづらくなります。

アフターピルは、性行為後の服用時間が早ければ早いほど、避妊率は上がります。 朝や夜などの時間帯、食前食後など、タイミングは気にせずに服用してください。

アフターピルを多く服用しても、避妊確率はあがりません。
生理周期が乱れたり、副作用が強く現れたりと、体に良くない影響を及ぼすこともあります。
処方箋に書いてある用法用量を守って服用してください。

コンドームなどの避妊対策と同じように、アフターピルを常時服用するのはやめましょう。
アフターピルは、あくまで緊急の避妊薬です。
短期で服用する場合も、体質やピルの種類によって体への影響が違います。
どれくらいのペースなら大丈夫なのか、医師に相談してください。

アフターピルの副作用に、悪心（吐き気）や嘔吐があります。
薬を出してしまった場合や、服用してから短い時間で嘔吐した場合は、もう一度服用しなおしてください。
また、嘔吐が毎回起こる、副作用が強く出るなどの場合は、薬が合っていないか、強い可能性があります。
クリニックに相談して、ほかのアフターピルを処方してもらってください。

併用薬以外にも、食品や飲料などで、ピルの作用を強めたり弱めたりするものがあります。
特に、アフターピルを服用後24時間以内は、以下の3つを摂取しないでください。

食品や飲料だけでなく、サプリメントや栄養ドリンクなど、さまざまなものに含まれています。
裏面などに書いてある原材料名や成分名を確認して、含まれていないかチェックしてください。

肥満の人

2013年フランスの臨床実験では、体重が75Kg以上、BMIが30以上の人は十分な効果を発揮できないとされていました。しかし、エラワン（ ella One）は肥満の方にも効果を発揮するといわれています。
詳しくは医師にご相談ください。

35歳代以上の女性で、タバコを1日15本以上吸う人

35歳以上で1日当たりの喫煙量が多い女性は、アフターピルを服用すると、血栓症のリスクが高まります。
ピルの種類や体質にもよりますので、心配な人は医師に相談してください。

なんらかの病気にかかった、遺伝性の病気にかかった身内がいる人

アフターピルの種類の項目に掲載しましたが、服用が出来ない病気や、注意が必要な病気があります。 過去から現在において該当する病気にかかったことがある人や、遺伝性の病気にかかったことがある近しい身内がいる人は、注意が必要です。 心当たりがある人は、クリニックで医師に相談してください。