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ヒアルロン酸を溶かしたい時の溶解注射とは?適応・判断基準と受診目安を解説
2026.09.21
ヒアルロン酸を「溶かしたい」と感じたときに知っておきたいこと

ほうれい線や目の下、唇などにヒアルロン酸を注入したあと、「思っていた仕上がりと違う」「しこりが気になる」
と感じて調べ始めた方もいるかもしれません。ヒアルロン酸には、分解酵素を注射して溶かす方法があります。
当院でも日に日にヒアルロン酸のトラブルの相談が増えてきており、今では全国からヒアルロン酸による膨張、しこり、変形などのご相談が相次いでいます。
ただしこの溶解注射は国内では未承認の医薬品を使う治療で、気になったら誰でもすぐ受ければよいという性質のものではありません。
本記事では、国内の学会が作成した診療指針や海外の公的情報をもとに、溶解注射の仕組みと検討される主なケース、急いで受診したいサイン、リスクを整理しました。今すぐ相談すべきか、落ち着いて医師と話し合えばよいのかを判断する材料にしてください。
この記事でわかること
- ヒアルロン酸溶解注射(ヒアルロニダーゼ)の仕組みと国内での承認状況
- 溶解を検討する主なケースと、すぐに受診したい危険なサイン
- 「どのヒアルロン酸でも1回で溶ける」などのよくある誤解
- アレルギーなどのリスクと、治療前に医師へ伝えたいこと
- カウンセリングで確認したいチェックリスト
ヒアルロン酸溶解注射とは(仕組みと承認状況)

ヒアルロン酸を分解する酵素を注射する治療
ヒアルロン酸溶解注射は、ヒアルロン酸を分解する酵素「ヒアルロニダーゼ」を気になる部位に注射する治療です。
注入されたヒアルロン酸は、もともと体内にあるヒアルロニダーゼによって時間をかけて分解・吸収されます。日本皮膚科学会や日本形成外科学会などが作成に関わった美容医療診療指針によれば、ヒアルロニダーゼ製剤を注射すると、注入したヒアルロン酸を積極的に分解・除去できます。
同じ指針は、体内で吸収されるフィラー(注入剤)の大きな特長を「治療が可逆的であること」、つまり元に戻せることだと説明しています。溶解注射は、この元に戻せるという性質を支える手段のひとつです。
国内では未承認の医薬品です
2022年に発行された美容医療診療指針(令和3年度改訂版)では、ヒアルロニダーゼ製剤は「本邦未承認」と記載されています。国内で使う場合は、国の承認を受けていない医薬品を医師の判断と責任で用いる治療です。
米国では、ウシ由来、ヒツジ由来、遺伝子組換えヒト型のヒアルロニダーゼ製剤がFDA(米国食品医薬品局)の承認を受けています。ただし2024年に医学誌JMIR Dermatologyに掲載されたレビュー論文は、美容領域での使用は承認された使い方以外での使用(適応外使用)だと明記しています。海外で承認された製剤でも、フィラーを溶かす目的で承認されたわけではありません。
また厚生労働省は、個人輸入された医薬品による健康被害は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象にならないと案内しています。治療を受ける前に、使用する製剤の由来と入手経路、万一の際の対応を医療機関に確認しておきましょう。
溶かせる注入物と溶かせない注入物
顔に注入される充填剤にはヒアルロン酸以外の成分もあり、成分によって「溶かす」という選択肢があるかどうかが変わります。以下は、美容医療診療指針の記載をもとに整理したものです。
| 注入物の種類 | 体内での吸収 | ヒアルロニダーゼでの分解 | 診療指針の主な記載 |
|---|---|---|---|
| ヒアルロン酸 | 数か月から1年程度で分解・吸収されるものがある(製剤の性質や体の状態で変動) | 分解できる。ただし製剤によって分解されにくいものもある | 承認品もあるが、未承認品も広く使われている |
| カルシウムハイドロキシアパタイト、ポリ乳酸(PLLA) | 分解・吸収に数年かかる | ヒアルロン酸ではないため対象外 | 吸収性フィラーのうち、長く残るタイプに分類される |
| 非吸収性フィラー(シリコンゲル、ポリアクリルアミドハイドロジェルなど) | 吸収されない | 分解できる薬剤がない | 国内ではすべて未承認。除去が難しく、顔のシワ治療には使わないよう強く推奨されている |
溶解注射を検討する主なケース(適応)

前述のレビュー論文(2024年)は、ヒアルロン酸注入の合併症にヒアルロニダーゼを使う場面として、血流障害、青く透ける現象、しこり、入れすぎや位置のずれなどを整理しています。これらは、一刻を争うものと、落ち着いて相談できるものに分かれます。
緊急性が高い:血流障害(血管閉塞)の疑い
ヒアルロン酸が血管内に入ったり、周囲の血管を圧迫したりすると、血流が途絶えることがあります。
FDAは、注入後に普段と違う痛み、見え方の変化、皮膚が白・灰色・青っぽくなる変化があれば、すぐに医療機関を受診するよう呼びかけています。突然話しにくくなる、しびれや力が入らないといった脳卒中を思わせる症状も同じ扱いです。
レビュー論文によると、最も早く出る症状は痛みで、皮膚の冷たさや白っぽさ、網目状の変色が早い段階のサインです。ヒアルロニダーゼはできるだけ早く、望ましくは4時間以内に投与するべきだとしています。
見え方の異常については、診療指針(2022)が、ヒアルロン酸による失明の報告は鼻、眉間、額への注入に集中していると記載しています。ヒアルロニダーゼの投与も試みられていますが、改善した例は少なく、治療法として確立されたとは言えないとも書かれています。目の異常を感じたら、一刻も早く受診してください。
入れすぎ・左右差・位置のずれ
注入量が多すぎた、左右で差がある、狙った位置からずれて見える。こうした仕上がりへの不満も、溶解を検討するきっかけになります。レビュー論文では、入れすぎや位置のずれ、注入物の移動が、炎症を伴わないしこりの原因になるとしています。
青く透けて見える(チンダル現象)
粒子状のヒアルロン酸が皮膚の浅すぎる層に入ると、青っぽく透けて見えることがあります。これを「チンダル現象」と呼び、長く続く場合もあります。レビュー論文では、ヒアルロニダーゼによる治療が選択肢として示されています。
しこり(結節)
しこりには、炎症を伴わないものと、赤みや痛みなど炎症を伴うものがあります。レビュー論文によると、注入からしばらくたって出る「遅発性結節」の発生率は0.5%、発症までの期間の中央値は4か月です。炎症を伴うしこりでは、ほかの治療を先に試したうえでヒアルロニダーゼを使う流れが示されており、溶解注射だけで対処するとは限りません。
診療指針(2022)にも、遅れて起こる合併症として、バイオフィルム(細菌がつくる膜)や膿瘍(うみのたまり)の形成が報告されていると記載されています。
受診の目安と判断基準

「溶かしたい」と感じたときは、3つの軸で整理すると判断しやすくなります。症状に緊急性があるか、注入したものがヒアルロン酸か、悩みが見た目の不満なのか体の不調なのか、という3点です。
すぐに連絡・受診したいサイン
- 注入部位やその周りの強い痛みが続く、または強くなっていく
- 皮膚が白っぽい、灰色、青紫色、網目状に変色している
- 皮膚が冷たく感じる
- 見えにくい、視野が欠けるなど目に異常がある
- 話しにくい、顔や手足がしびれる、力が入らない
これらは血流障害などのサインかもしれません。夜間や休日でも施術を受けた医療機関へすぐに連絡し、つながらない場合は救急を受診してください。
早めに施術先へ相談したいケース
- 赤みや熱っぽさ、痛みを伴う腫れやしこりがある
- 注入からしばらくたって、しこりや腫れが新たに出てきた
- 注入部位が青く透けて見える
落ち着いて相談できるケース
- ボリュームが多すぎる、左右差が気になる
- 形や位置が思っていたものと違う
診療指針によれば、ヒアルロン酸注入による合併症のほとんどは、腫れや痛み、赤みなどの軽いものです。とはいえ、注入後の一時的な腫れなのか合併症なのかを自分で見分けるのは難しいものです。迷ったときは施術を受けた医療機関に連絡し、患部の写真を添えて相談すると状況が伝わりやすくなります。
よくある誤解と見落としがちなポイント

誤解1:どのヒアルロン酸でも1回できれいに溶ける
診療指針(2022)は、ヒアルロニダーゼでどの程度分解されるかは製剤によって異なり、分解されにくいものもあると記載しています。さらに、吸収に長い期間がかかる製剤やヒアルロニダーゼが効きにくい製剤は、「元に戻せる」という長所を失っている点に注意が必要だとしています。レビュー論文でも、製剤によって溶かすのに必要な量が異なるという研究が取り上げられています。
そのため、1回で希望どおりになるとは限りません。レビュー論文では、炎症のないしこりに少量を注射し、1週間後に状態を見直す方法も示されています。少しずつ調整することを前提に、回数や間隔を医師と相談しましょう。
誤解2:溶解注射で自分の組織まで溶けて戻らない
ヒアルロニダーゼは、もともと皮膚にあるヒアルロン酸も分解します。ただしレビュー論文によれば、体内のヒアルロン酸は15〜20時間で元に戻るため、肌質に長く悪影響が残ることはないとしています。ヒアルロニダーゼは注射してすぐに作用し始め、その作用は24〜48時間続くと報告されています。
見落としやすいのは、溶かすと注入前の状態に戻るという点です。ヒアルロン酸で補っていたくぼみやシワは、溶かしたあと再び見えるようになります。溶かしすぎて物足りなさを感じないよう、溶かす範囲や量は医師と慎重に決めたいところです。
見落としがちなポイント:何を入れたかわからないまま溶かすことはできない
以前受けた注入の製剤名を覚えていない方もいるでしょう。ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸を分解する酵素なので、それ以外の注入物は分解できません。診療指針(2020)は、非吸収性フィラーには分解する薬剤がなく、除去が難しいと記載しています。注入した時期、部位、製剤名、施術を受けた医療機関がわかる資料があれば、相談の際に持参しましょう。
ダウンタイムとリスク・副作用

アレルギー反応
ヒアルロニダーゼでまず知っておきたいのがアレルギーです。レビュー論文によると、眼科の麻酔で目の周りに用いた場合のアレルギー発生率は0.03〜0.13%、即時型のアレルギーは約0.1%と報告されています。緊急時は事前のテストを行わずに投与し、アナフィラキシーの治療薬であるアドレナリンをすぐ使えるようにしておく必要があるとしています。
緊急ではない治療の場合、少量を皮膚に注射して反応を見る皮膚テストは「任意」とされています。実施するかどうかは医療機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
医師に必ず伝えたいこと
- ハチに刺されてアレルギー反応が出たことがある(レビュー論文では交差反応のリスクがあるとされる)
- 服用中の薬やサプリメント(サリチル酸系の薬、抗炎症薬、ステロイド、ハーブ類、ヘパリン、ビタミンC、エストロゲン、抗ヒスタミン薬は、組織をヒアルロニダーゼが効きにくい状態にするとされる)
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある
- これまでの注入歴(時期・部位・製剤名)
ダウンタイムについて
溶解注射も注射である以上、針を刺した部位の腫れや赤み、内出血などが出る可能性があります。症状の出方や続く期間は、部位や注射量によって変わります。当日のメイクや入浴、運動をいつから再開できるかも含め、施術前に医師へ確認しておきましょう。
向いている人・慎重に検討したい人
溶解注射が選択肢になりやすい人
- 注入したものがヒアルロン酸だとわかっている
- 入れすぎや左右差、位置のずれ、青い透けなど、ヒアルロン酸そのものが原因の悩みがある
- 国内未承認薬を使う治療であることを理解し、リスクの説明に納得している
慎重に検討したい人
- ハチ刺されによるアレルギー歴がある
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある
- 注入物の種類がわからない、またはヒアルロン酸以外を注入した可能性がある
- 気になっているのが、たるみなどヒアルロン酸以外の要因による変化である
悩みの原因がヒアルロン酸ではなく、たるみや皮膚のゆるみにある場合、溶かすだけでは解決しにくいこともあります。BIOTOPE CLINIC 白金では、理事長の苅部淳医師が日本形成外科学会形成外科専門医で、ヒアルロン酸注入のほか、目の下の悩みに対する裏ハムラ法など手術も選択肢として扱っています。気になる方はご相談ください。
費用の考え方(自由診療)
美容目的のヒアルロン酸溶解注射は、健康保険が使えない自由診療です。厚生労働省の資料でも、美容医療は保険適用されない自由診療として提供されていると整理されています。料金は医療機関ごとに異なるため、表示価格だけでなく総額で確認しましょう。
- 注射量や部位の数によって料金がどう変わるか
- 皮膚テスト代や診察料、再診料が別にかかるか
- 1回で溶けきらず、追加の注射が必要になった場合の料金
- 他院で注入したヒアルロン酸にも対応できるか、その場合に料金の違いはあるか
カウンセリング前に確認したいこと
国民生活センターによると、美容医療サービスに関する相談件数は2023年度が6,281件、2024年度が10,744件、2025年度が7,944件でした。寄せられた事例には、美容注射のリスクについて十分な説明がなかったという相談も含まれています。厚生労働省の資料も、美容医療の利用が増えるにつれて相談件数や危害事例が増えていると指摘しています。
消費者庁は、美容医療を受ける前に次の4点を確認するよう呼びかけています。
- 使用する薬などがどのようなものか、自分でも説明できるか
- 効果だけでなく、リスクや副作用なども知り、納得したか
- ほかの施術方法や選択肢の説明も受け、自分で選んだか
- その施術は「今すぐ」必要か
溶解注射の相談では、次の点もあわせて確認しておくと安心です。
- 使用するヒアルロニダーゼ製剤の名前、由来(動物由来か遺伝子組換えか)、入手経路
- 国内未承認薬であることの説明と、健康被害が起きた場合の対応
- 皮膚テストを行うかどうかと、アレルギーが起きたときの備え
- 1回で溶けきらなかった場合、いつ見直して追加治療をするか
- 溶かしたあとに改めてヒアルロン酸を入れたい場合、いつから可能か
契約や解約のトラブルは消費者ホットライン「188」、医療広告に関する相談は医療機関を所管する自治体の窓口が相談先として案内されています。
よくある質問
- Q. ヒアルロン酸は溶かさなくても自然に吸収されますか?
- 注入したヒアルロン酸は、体内の酵素によって少しずつ分解・吸収されます。ただし、吸収までの期間は製剤の性質や体の状態によって変わると診療指針に記載されています。急を要する症状がなければ、自然な吸収を待つか溶かすかを医師と相談して決めましょう。
- Q. 他院で入れたヒアルロン酸でも溶解注射は受けられますか?
- ヒアルロン酸であれば、ヒアルロニダーゼによる分解の対象です。ただし製剤によって分解のされやすさが異なるため、注入した時期や部位、製剤名がわかる資料があると判断の助けになります。対応してもらえるかどうかは医療機関ごとに確認してください。
- Q. 溶解注射の効果はいつ頃から出ますか?
- レビュー論文では、ヒアルロニダーゼは注射してすぐに作用し始め、作用は24〜48時間続くと報告されています。炎症のないしこりでは、1週間後に状態を見直す方法も示されています。経過には個人差があるため、いつ評価するかは医師に確認しましょう。
BIOTOPE CLINIC 白金へのご相談
気になる症状・治療法は、形成外科専門医・苅部医師にカウンセリングでご相談ください。お一人おひとりの肌・お悩みに合わせて、最適な治療法をご提案いたします。
所在地: 東京都港区白金 / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
まとめ
ヒアルロン酸溶解注射は、ヒアルロニダーゼという酵素で、注入したヒアルロン酸を分解する治療です。国内では未承認の医薬品を使うため、製剤の由来や入手経路、リスクについて説明を受け、納得したうえで選びたい治療です。
強い痛み、皮膚の色の変化、見え方の異常があるときは、ためらわずすぐに受診してください。入れすぎや左右差、しこりなど急を要さない悩みは、注入物の種類やこれまでの経過を整理し、溶かすかどうかを医師と一緒に判断しましょう。
気になる方はカウンセリングでご相談ください。麹町皮ふ科•形成外科クリニック、BIOTOPE CLINIC 白金(港区白金)でもご相談いただけます。
References
- 資料名『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』日本美容外科学会会報 2022 Vol.44 特別号、厚生労働科学研究費補助金 美容医療に関する調査研究班 美容医療診療指針作成分科会(協力:日本美容外科学会(JSAPS)、日本美容皮膚科学会、日本美容外科学会(JSAS)、日本形成外科学会、日本皮膚科学会)、2022年 出典
- 資料名『美容医療診療指針(令和元年度厚生労働科学特別研究事業)』日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会・日本美容外科学会(JSAPS)・日本美容外科学会(JSAS)、2020年 出典
- 資料名『Hyaluronidase for Dermal Filler Complications: Review of Applications and Dosage Recommendations』Kroumpouzos G, Treacy P. JMIR Dermatology 7:e50403、2024年 出典
- 資料名『Dermal Fillers (Soft Tissue Fillers)』U.S. Food and Drug Administration、2023年 出典
- 資料名『美容医療の適切な実施に関する検討会の議論の状況について(第111回社会保障審議会医療部会 資料1)』厚生労働省医政局、2024年 出典
- 資料名『医薬品等を海外から購入しようとされる方へ』厚生労働省、2026年閲覧 出典
- 資料名『美容医療サービス(各種相談の件数や傾向)』独立行政法人国民生活センター、2026年 出典
- 資料名『美容医療を受ける前に確認したい事項と相談窓口について』消費者庁、2026年閲覧 出典
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監修医師
苅部 淳
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理事長
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