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ボトックスの効果・持続期間は?眉間・目尻の国内臨床データで解説
2026.08.26
ボトックスの効果はいつから出て、どのくらい続くのか

「打ってからどのくらいで効いてくるのか」「次はいつ受ければいいのか」。
ボトックス注射を検討する段階で、多くの方が最初に気にするのがこの2点です。効果が切れる時期が読めないと、予定も予算も立てにくくなります。
この記事では、私の経験と国内で承認されている製剤の添付文書(電子添文)と、5学会が作成した美容医療診療指針という一次資料をもとに、効果の立ち上がりと持続期間を整理します。
数字はすべて出典を示しました。読み終えるころには、次回の目安をご自身で組み立てられるはずです。
- 効果が出はじめる時期と、最大になる時期の目安
- 国内臨床試験で示された眉間・目尻それぞれの持続期間の実数
- 「3~4か月」と「4~5か月」という2つの数字が併存する理由
- 持続期間を左右する要因と、打ち直しの適切な間隔
- 副作用・禁忌と、カウンセリングで確認したいチェック項目
ボトックスとは(仕組みと国内での承認範囲)

筋肉の動きをやわらげるしくみ
ボトックスはA型ボツリヌス毒素製剤の商品名です。ボツリヌス菌がつくるたんぱく質を精製した医薬品で、筋肉を動かす指令の伝達をやわらげる働きを持ちます。
ボトックスビスタ注用50単位の電子添文(2025年3月改訂・第3版)では、作用機序を「末梢の神経筋接合部における神経終末内でのアセチルコリン放出抑制により神経筋伝達を阻害し、筋弛緩作用を示す」と記載しています。アセチルコリンは、神経が筋肉に「縮め」と伝えるための物質です。この受け渡しが弱まることで、表情のクセによって寄る皺がやわらぎます。
ここで重要なのが、この状態が永続しないことです。同じ電子添文は「神経筋伝達を阻害された神経は、軸索側部からの神経枝の新生により数ヵ月後には再開通し、筋弛緩作用は消退する」と続けています。神経が枝を伸ばして新しい接続をつくり直すため、効果は時間とともに薄れていきます。持続期間に上限があるのは、この回復プロセスがあるからです。
国内で承認されているのは眉間と目尻
ボトックスビスタ注用50単位の効能又は効果は「65歳未満の成人における眉間又は目尻の表情皺」です(承認番号22100AMX00398000、販売開始2009年2月)。効能又は効果に関連する注意として「高齢者(65歳以上)への投与は推奨できない」とも明記されています。
額、あご、いわゆるエラなど、それ以外の部位への美容目的の注射は、承認された効能・効果の範囲外にあたります。国内では実際に行われている施術ですが、適応外使用である点は施術前に確認しておきたいところです。なお眼瞼痙攣や重度の原発性腋窩多汗症などの疾患に対しては、同じA型ボツリヌス毒素製剤でも「ボトックス注用50単位又はボトックス注用100単位」を用いるよう電子添文が指示しています。製剤が別で、保険の扱いも別です。
効果・期待できる変化

2~3日で立ち上がり、2~3週間で最大になる
日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会などが作成した『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』は、ボツリヌス菌毒素製剤について「効果は、通常2~3日で現れ2~3週間で最大となる」と記しています。注射した当日に鏡を見ても変化が乏しいのは、この立ち上がりの遅さが理由です。
効果判定を焦らないでください。仕上がりを評価するなら、施術から2週間ほど置いた時点が目安になります。同指針はCQ2-4で「ボツリヌス菌毒素製剤注入により、顔面の表情ジワの改善が期待できる」とし、推奨度1(治療を希望する患者には、行うことを強く推奨する)としています。
国内臨床試験が示した持続期間
電子添文の臨床成績の項には、日本人を対象とした試験の実数が載っています。持続期間は「最大緊張時の皺の程度が中等度以上に復するまでの期間」として測定されたものです。
| 部位・試験 | 用量 | 改善率 | 効果持続期間 |
|---|---|---|---|
| 眉間 (国内長期投与試験・最大5回反復) |
10単位 | 初回投与4週後 92.2%(166/180例) | 平均13.3±6.37週(178例) |
| 20単位 | 初回投与4週後 95.1%(174/183例) | 平均15.6±7.00週(175例) | |
| 目尻 (国内第Ⅲ相試験) |
12単位 | 投与後30日目 56.6%(56/99例) | 中央値85.0±30.07日(99例) |
| 24単位 | 投与後30日目 68.3%(71/104例) | 中央値95.0±47.22日(104例) |
目尻の試験ではプラセボ群の改善率が8.2%(8/97例)でした。実薬との差がはっきり出ています。
眉間の20単位群で平均15.6週、目尻の24単位群で中央値95日。おおよそ3か月半前後という数字です。ただし標準偏差が±7.00週、±47.22日と大きい点にも目を向けてください。個人差の幅がそれだけ広いということです。
用量が多いほうが長い傾向
眉間では10単位群13.3週に対し20単位群15.6週、目尻では12単位群85.0日に対し24単位群95.0日でした。用量が多いほうが持続期間は長い傾向が読み取れます。
一方で用量には上限があります。電子添文は、眉間への1回の投与量を最大20単位まで、目尻を最大24単位まで、眉間と目尻を同時に治療する場合は合計で最大44単位までと定めています。長持ちを狙って無制限に増やせるものではありません。
よくある誤解と、見落としがちなポイント

誤解1:「3~4か月」と「4~5か月」はどちらが正しいのか
ボトックスの持続期間として、2つの数字を目にすることがあります。電子添文の重要な基本的注意には「本剤の投与は対症療法であり、効果は通常3~4ヵ月で消失し、投与を繰り返す必要がある」とあり、これは患者に文書で説明すべき事項として挙げられています。対して『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』は「個人差はあるが臨床上は4~5か月前後持続し、時間経過とともに効果は減弱していく」と記載しています。
どちらかが誤りというわけではありません。前者は「中等度以上の皺に戻るまで」という厳密な判定基準に基づく数字、後者は診療現場での体感を含む幅のある表現です。切れ方はある日突然ではなく、徐々に薄れていきます。「完全に元に戻る時期」と「効きが弱まったと感じ始める時期」がずれるため、数字にも幅が出ます。
誤解2:「効きが落ちてきたら早めに打ち直せばいい」
電子添文の用法及び用量は、眉間・目尻いずれについても「症状再発の場合には再投与することができるが、3ヵ月以内の再投与は避けること」と定めています。効果が薄れてきた感覚があっても、前回から3か月以内の追加注射は避ける前提です。
理由のひとつが抗体の問題です。電子添文は「本剤の投与を長期間繰り返した場合、中和抗体の産生により、効果が認められなくなることがある」と記載し、効果の減弱がみられる場合には抗体検査を実施するとしています。『美容医療診療指針』も「中和抗体を産生するリスクを避けるには投与量・投与間隔などに留意する必要がある」と述べています。短い間隔で打ち重ねる習慣は、将来の効きにくさにつながる可能性があります。
誤解3:「単位数さえ同じなら製剤は何でも同じ」
これは持続期間の比較で特に誤解が生じやすい点です。『美容医療診療指針』は「現在、販売されている各製剤は、タンパクの分子量と添加されているアルブミンの量が異なる」としたうえで、「未承認製剤を使用する際、各々製剤の投与量・単位は互いに互換性はないことを念頭に置き」と注意を促しています。同指針はボツリヌス菌毒素製剤の承認状況を「承認品もあるが、未承認品も広く使用されている」とも記しています。
製剤が違えば、同じ「10単位」でも意味が変わります。他院で受けた施術と単位数だけを比べても、持続期間の予測にはつながりません。
なお厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課は、令和6年8月13日付の事務連絡で、承認品と有効成分・用量・投与方法等が同一の海外製未承認医薬品の輸入確認について、「次回以降は国内承認品が使用されるよう促すこととされたい」と各地方厚生局に通知しています。同事務連絡が引用するQ&Aでは「国内製品に比べ安価である、患者が海外製品の使用を希望している」といった理由は認められないとされています。どの製剤を使うのかは、施術前に確認しておきたい項目です。
ダウンタイムと副作用

電子添文の国内長期投与試験(眉間)では、副作用発現頻度は20単位群32.2%(59/183例)、10単位群30.6%(55/180例)でした。20単位群の主な副作用は、眼の異常感11.5%(21/183例)、頭痛4.9%(9/183例)、注射部位疼痛4.4%(8/183例)、注射部位不快感4.4%(8/183例)、眼瞼下垂4.4%(8/183例)です。
眉間の国内一般臨床試験では副作用発現率36.8%(46/125例)、うち眼瞼下垂10.4%(13/125例)が報告されています。目尻の国内第Ⅲ相試験では副作用発生頻度が24単位群4.0%(6/151例)、12単位群2.8%(4/143例)で、2例以上発現した副作用はありませんでした。
重大な副作用として、ショック・アナフィラキシー・血清病(頻度不明)、眼障害(頻度不明)、嚥下障害(頻度不明)および呼吸障害(0.02%)、痙攣発作(頻度不明)が挙げられています。
『美容医療診療指針』が引用する米国FDAへの有害事象報告の集計(2005年、美容目的と治療目的の両方)では、重篤な副作用は認められず、最も多かったのは効果が認められなかった(63%)、注射部位の局所反応(19%)、眼瞼下垂(11%)でした。同指針は、副作用が生じても可逆性であることから安全性の高い治療と評価しています。
眼瞼下垂を減らすため、電子添文は皺眉筋への注射時に骨眼窩上隆起から1cm以上上方に投与することなど、具体的な注射位置の注意も定めています。解剖を踏まえた手技が結果を左右します。
向いている人・向かない人

電子添文が定める禁忌は次のとおりです。該当する場合、この製剤は使用できません。
- 全身性の神経筋接合部の障害をもつ方(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症など)
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性、および授乳婦
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方
- 他のボツリヌス毒素製剤にて治療中の方
妊娠に関しては、投与中および最終投与後2回の月経を経るまでの避妊が求められています。男性についても、投与中および最終投与後少なくとも3か月の避妊が記載されています。妊娠を計画している方は、時期の調整を含めて医師に相談してください。
年齢についても線引きがあります。電子添文の高齢者の項には、海外臨床試験で「65歳以上の高齢者では65歳未満の非高齢者よりも有効性が低く、有害事象発現率は高くなることが認められている」と記されています。
慢性の呼吸器障害、重篤な筋力低下や萎縮、閉塞隅角緑内障やその素因、神経学的障害がある方は、特定の背景を有する患者として注意が必要な対象に含まれます。持病と内服薬は必ず申告してください。
費用の目安と、自由診療である理由
ボトックスビスタ注用50単位の電子添文は、保険給付上の注意として「本剤は保険給付の対象とならない(薬価基準未収載)」と明記しています。眉間や目尻の表情皺に対する治療は、全額自己負担の自由診療です。
費用は部位、投与単位数、使用する製剤、施術回数によって変わります。総額を比べる際は、1回あたりの金額だけでなく、年に何回受ける想定なのかまで含めて考えると実態に近づきます。持続期間がおおよそ3~4か月であれば、年間の回数はおのずと決まってきます。
診察料やカウンセリング料が別途かかるかどうかも、事前に確認しておきたい項目です。金額の内訳は医療機関ごとに異なります。
カウンセリングで確認したいチェックリスト
消費者庁は「美容医療を受ける前に確認したい事項」として、次の4点を挙げています。
- 使用する薬などがどのようなものか、自分でも説明できますか?
- 効果だけでなく、リスクや副作用などについても知り、納得しましたか?
- ほかの施術方法や選択肢の説明も受け、自分で選択しましたか?
- その施術は「今すぐ」必要ですか?最後にもう一度、確認しましょう。
ボトックスに即して言い換えると、確認したいのは以下の点です。
- 使用する製剤名と、国内承認の有無
- 注射する部位が承認された効能・効果の範囲内か、適応外使用にあたるか
- 今回の投与単位数と、次回までの間隔の目安
- 眼瞼下垂などの副作用が出た場合の対応と連絡先
- 効果が薄れてきたときの判断基準(打ち直しの目安)
- 診察料を含めた費用の総額と、自由診療である旨の説明
その場で即決を迫られる場面では、いったん持ち帰る判断も選択肢です。消費者庁も、契約に関する相談窓口として消費者ホットライン(188)、医療に関する広告についての相談先として医療機関を所管する自治体の窓口を案内しています。
よくある質問
- Q. 打ち続けると効かなくなりますか?
- 電子添文には「本剤の投与を長期間繰り返した場合、中和抗体の産生により、効果が認められなくなることがある」と記載されています。効果の減弱がみられる場合は抗体検査を実施し、抗体産生がなければ追加投与ができるとされています。リスクを下げるには、投与量と投与間隔を守る運用が前提になります。
- Q. 効果が切れてきたら、皺は前より深くなりますか?
- 電子添文の作用機序の項では、阻害された神経は数か月後に再開通し、筋弛緩作用は消退すると記載されています。もとの状態に戻る経過であり、悪化するという記載はありません。気になる変化があれば施術を受けた医療機関に相談してください。
- Q. 眉間と目尻を同時に治療できますか?
- 電子添文は、眉間と目尻を同時に治療する場合、1回の投与量を合計で最大44単位までと定めています。国内の同時投与試験も実施されており、44単位群の副作用発現率は10.6%(5/47例)、32単位群は11.3%(6/53例)でした。実施の可否は診察のうえで判断されます。
BIOTOPE CLINIC 白金へのご相談
気になる症状・治療法は、形成外科専門医・苅部医師にカウンセリングでご相談ください。お一人おひとりの肌・お悩みに合わせて、最適な治療法をご提案いたします。
所在地: 東京都港区白金 / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
まとめ
効果は2~3日で現れはじめ、2~3週間で最大に達します。持続期間は国内臨床試験で眉間20単位が平均15.6週、目尻24単位が中央値95日と示され、電子添文は「通常3~4ヵ月で消失」と記載しています。標準偏差の大きさが示すとおり、個人差の幅は広めです。
長持ちを狙って間隔を詰めるのは避けたい選択です。3か月以内の再投与を避けるという用法上の定めには、中和抗体という理由があります。使用する製剤と、注射する部位が承認範囲内かどうかを確認したうえで、年単位の計画として組み立ててください。
眉間や目尻の表情皺が気になる方には、ボトックス注射という選択肢もあります。皺の状態や表情のクセによって、ヒアルロン酸など他の方法が向く場合もありますので、気になる方はカウンセリングでご相談ください。BIOTOPE CLINIC 白金(港区白金)でもご相談いただけます。
References
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)『ボトックスビスタ注用50単位 電子添文(2025年3月改訂・第3版)』アッヴィ合同会社、2025年 出典
- 公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本形成外科学会・一般社団法人日本美容皮膚科学会ほか『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』日本美容外科学会会報 Vol.44 特別号、2022年 出典
- 厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課『ボトックスビスタ及びジュビダームビスタシリーズの医師個人輸入に係る輸入確認について(事務連絡)』2024年(令和6年8月13日) 出典
- 消費者庁『美容医療を受ける前に確認したい事項と相談窓口について』 出典
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監修医師
苅部 淳
Karibe Jun
理事長
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受 賞
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