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動物由来ヒアルロニダーゼの特徴とアレルギーリスクを解説|生化学工業製は?
2026.09.19
「動物由来のヒアルロニダーゼは危ない」と読んで、不安になっていませんか

ヒアルロン酸注入をやり直したい、入れすぎた部分を溶かしたい。
そう考えて調べていくと、必ず出てくるのが「ヒアルロニダーゼ」という酵素の名前です。そして検索を続けるうちに、「動物由来はアレルギーが出やすい」「ヒト由来なら安全」といった、断定的な書き方の情報に行き当たります。
さらに「生化学工業のヒアルロニダーゼ」という表現を目にして、国内メーカーの製品なら安心なのだろうか、と思った方もいるはずです。ただ、この分野は公的な資料と、インターネット上で流通している説明との間に、思いのほか開きがあります。
この記事は、公的機関や学会の資料、そして各国の添付文書に実際に書かれている内容だけをたどりながら、由来による違いとアレルギーのリスクを整理したものです。判断材料をそろえるための読み物として活用してください。
- ヒアルロニダーゼの由来(ヒツジ・ウシ・ヒト遺伝子組換え)ごとの違いと、添付文書に書かれた記載内容
- 「生化学工業のヒアルロニダーゼ」という表現を、公式情報でどこまで確認できるか
- アレルギー反応の頻度として添付文書に記載されている数字と、皮内テストの位置づけ
- 日本国内の承認状況と、未承認の薬を使う治療で確認しておきたい制度上の注意点
- カウンセリングで確認したい項目のチェックリスト
ヒアルロニダーゼとは(仕組みと由来)

ヒアルロン酸を分解する酵素
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を加水分解する酵素です。米国のAMPHADASE添付文書には、結合組織の透過性を変化させる「dispersion agent(拡散剤)」として、ヒアルロン酸の加水分解を通じて作用すると記載されています。
美容医療の場面では、この性質を利用して、注入済みのヒアルロン酸製剤を分解する目的で使われています。日本の5学会が共同で作成した『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』にも、ヒアルロニダーゼ製剤を注射することで注入されたヒアルロン酸製剤を積極的に分解除去できる、という趣旨の記載があります。
由来は大きく3種類
製剤の由来は、ヒツジ精巣、ウシ精巣、そしてヒト遺伝子組換えの3系統に分かれます。米国のVITRASEは「精製されたヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ」、AMPHADASEは「精製されたウシ精巣ヒアルロニダーゼ」と、それぞれの添付文書に明記されています。HYLENEX recombinantは、ヒトヒアルロニダーゼ(PH20)の可溶性断片をコードするDNAプラスミドを導入したCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)で産生されると記載されています。
つまり「動物由来」と一括りにされているものの中身は、ヒツジとウシで別物です。そして「ヒト由来」と呼ばれているものは、ヒトの組織から採ったものではなく、遺伝子組換え技術で作られたタンパク質です。
「生化学工業のヒアルロニダーゼ」は公式情報で確認できるか

見落としがちなポイント:メーカー公式サイトの製品一覧
ここが、この記事でいちばん整理しておきたい部分です。生化学工業株式会社は、ヒアルロン酸ナトリウムを扱う国内メーカーとして知られています。同社が公開している「医薬品原体」のページに掲載されているのは、医薬品用のヒアルロン酸ナトリウムと、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムの2品目です。
また「医療用医薬品・医療機器」のページに並ぶ国内販売製品は、関節機能改善剤、眼科手術補助剤、腰椎椎間板ヘルニア治療剤、内視鏡用粘膜下注入材といった品目です。2026年9月時点で公開されているこれらの製品一覧に、ヒアルロニダーゼ製剤の記載は見当たりません。
メーカー名より先に確認したいこと
製造元の企業名が国内メーカーであることと、その製品が日本国内で医薬品として承認されていることは、別の話です。前者が確認できても後者が保証されるわけではありません。
治療を検討する段階で確認したいのは、企業名そのものよりも、使用する製剤の由来、国内での承認状況、入手経路の3点です。この3点は、後述するとおり、厚生労働省の医療広告ガイドラインが情報提供を求めている項目とも重なります。
由来による違いを比較する

以下は、米国で承認されている代表的な3製剤について、各添付文書に記載されている内容を整理した表です。日本の承認状況とは切り離して読んでください。
| 由来 | 製品例(米国) | 添付文書上の適応 | アレルギーに関する記載 |
|---|---|---|---|
| ヒツジ精巣 | VITRASE(初回米国承認2004年、改訂2024年1月) | 皮下輸液の補助、他剤の分散・吸収促進、皮下尿路造影 | アレルギー反応(蕁麻疹、血管性浮腫)は0.1%未満に報告。アナフィラキシー様反応はまれに発生 |
| ウシ精巣 | AMPHADASE(Amphastar、改訂2018年2月) | 同上 | 同様の頻度記載に加え、過敏症の皮内テスト手順を添付文書に明記 |
| ヒト遺伝子組換え(CHO細胞) | HYLENEX recombinant(Halozyme、初回米国承認2005年、改訂2024年11月) | 同上 | アレルギー反応は0.1%未満に報告。皮内テストの記載はなし |
表を見て気づく点が2つあります。ひとつは、アレルギー反応の頻度として記載されている「0.1%未満」という数字が、3製剤で共通していることです。由来ごとに異なる発生率が添付文書に示されているわけではありません。
もうひとつは、3製剤いずれの適応にも「ヒアルロン酸フィラーの溶解」が含まれていない点です。米国で承認されている用途は、皮下輸液の補助と、他の薬剤の吸収・拡散を助けることなどに限られています。
アレルギーとリスク:資料に書かれていること

皮内テストの具体的な手順
AMPHADASEの添付文書には、過敏症の予備的な皮内テストとして、150単位/mL溶液を約0.02mL(3単位)皮内注射する方法が記載されています。
5分以内に偽足を伴う膨疹が現れ、20〜30分持続し、局所のかゆみを伴う場合が陽性です。注射部位の一過性の発赤は陽性反応ではない、とも明記されています。
なお、この手順が書かれているのはウシ精巣由来のAMPHADASEで、HYLENEX recombinantの添付文書には皮内テストの記載がありません。3製剤とも、ヒアルロニダーゼまたは添加物への過敏症は禁忌です。
繰り返しの投与で起こりうること
AMPHADASEの薬物動態の項には、ヒアルロニダーゼは抗原性を持ち、比較的多量の反復投与によって中和抗体が形成されうる、という記載があります。一度で終わらせず何度も分解を試みる場合、この点は医師と共有しておきたい情報です。
動物由来タンパクと皮内テストの考え方
『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』では、同じ吸収性フィラーであるコラーゲン製剤について、ウシ由来であるため約3%に遅延型アレルギー反応を生じる可能性があり、注入前の皮内テストと4週間の経過観察が必要と記載されています。これはコラーゲン製剤についての記述で、ヒアルロニダーゼの数字ではありません。ただ、動物由来のタンパクを注射する治療では事前のテストが組み込まれてきた、という背景の理解には役立ちます。
国内の承認状況という、もうひとつのリスク
同指針は、ヒアルロン酸製剤の吸収に関する解説のなかで、ヒアルロニダーゼ製剤に「本邦未承認」と併記しています。2022年に公表された資料の記載である点は押さえたうえで読んでください。
日本で承認されているヒアルロニダーゼ含有の医薬品としては、ヒフデュラ配合皮下注(アルジェニクスジャパン株式会社)があります。有効成分はエフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)とボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)の配合で、医薬品リスク管理計画書では全身型重症筋無力症と慢性炎症性脱髄性多発根神経炎に向けた資材作成が計画されています。美容目的のヒアルロン酸溶解のために承認された製剤ではありません。
未承認の医薬品を自由診療で使う場合、厚生労働省の『医療広告ガイドラインに関するQ&A』は、未承認である旨、入手経路、国内承認医薬品の有無、諸外国での安全性情報の4点を明示するよう求めています。医師などの個人輸入による場合はその旨を明記し、厚生労働省の「個人輸入において注意すべき医薬品等について」のページを情報提供することも記載されています。
その厚生労働省のページ(医薬局監視指導・麻薬対策課)には、個人輸入される医薬品等の品質・有効性・安全性は医薬品医療機器等法に基づく確認がなされていないこと、個人輸入された医薬品による健康被害は医薬品副作用被害救済制度の救済対象とならないことが明記されています。PMDAの救済制度のページにも、美容医療に使われる医薬品には救済制度の対象にならないものがある、と書かれています。
効果・期待できる変化とダウンタイム

期待できるのは、注入済みのヒアルロン酸を分解し、形を戻す方向に近づけることです。ただし『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』は、分解の程度は製剤によって異なり、分解されにくいものもあると記載しています。「注射すれば必ず元通りになる」という理解は、資料の記述と一致しません。
副作用として添付文書に最も多く報告されているのは、注射部位の局所反応です。発赤、腫れ、かゆみ、痛みといった症状が該当します。腫れについては、皮下輸液に伴って最も多く報告されたとの記載があります。
血管内へのヒアルロン酸の誤注入で失明が疑われる場面では、ヒアルロニダーゼの投与が種々の経路で試みられてきました。ただし同指針は、有効例の報告はあるものの改善した症例数は少なく、治療法が確立されたとは言えない、という評価を示しています。
向いている人・向かない人
次のような状況に当てはまる方は、医師と一度整理して話す価値があります。
- 注入したヒアルロン酸の量や位置が気になり、修正を検討している
- しこりのように硬く残った部分がある
- 過去に動物性タンパクへのアレルギー症状を経験したことがあり、事前テストの可否を知りたい
- これまでにヒアルロニダーゼの投与を複数回受けている
- 妊娠中・授乳中、または持病があり、薬剤の使用に慎重な判断が必要
ヒアルロニダーゼまたは添加物への過敏症がある方は、各添付文書で禁忌とされています。感染部位や急性の炎症がある部位への注射も、感染を広げる危険があるとして避けるべきと記載されています。
費用の考え方(自由診療)
ヒアルロン酸注入やその修正を目的とした治療は自由診療で、費用は全額自己負担です。金額は施設ごとに設定されるため、この記事では具体的な相場を示しません。確認した公的資料に、美容目的のヒアルロン酸溶解に関する全国的な価格データは含まれていないためです。
金額と併せて確認したいのが、前述した救済制度の扱いです。個人輸入された医薬品による健康被害は救済対象外である、と厚生労働省が明記しています。費用の総額だけでなく、万一のときにどうなるかまで含めて比較してください。
なお、国民生活センターが公表している美容医療サービスの相談件数は、2023年度6,281件、2024年度10,744件、2025年度7,944件と推移しています(2026年7月31日更新時点)。契約や説明をめぐる相談が一定数寄せられている分野だ、という前提で情報を集めたいところです。
カウンセリングで確認したいこと
- 使用する製剤の由来は、ヒツジ精巣・ウシ精巣・ヒト遺伝子組換えのどれか
- その製剤は日本国内で承認されているか。未承認であれば入手経路はどうなっているか
- 同じ成分で国内承認された医薬品があるか
- 事前の皮内テストを行うか。行う場合の方法と、結果を待つ期間
- アナフィラキシーが起きた場合の院内での対応体制と、連携先の医療機関
- 過去のヒアルロニダーゼ投与歴を伝えたうえでの判断
- 1回で分解しきれなかった場合の追加費用と回数の目安
- 健康被害が生じた場合、救済制度の対象になるかどうか
ヒアルロン酸注入そのものについては、BIOTOPE CLINIC 白金(東京都港区白金)でもご相談いただけます。入れる前の設計を丁寧に詰めておくことが、後から溶かす選択を減らすことにつながります。
よくある誤解
ひとつめは、「ヒト由来だからアレルギーは起きない」という理解です。HYLENEX recombinantの添付文書にも、アレルギー反応が0.1%未満に報告され、アナフィラキシー様反応がまれに起きていると記載され、過敏症は禁忌とされています。由来にかかわらず、リスクがゼロになる製剤は確認できません。
ふたつめは、「海外で承認されているのだから、ヒアルロン酸を溶かす用途も承認済み」という理解です。米国で承認されている3製剤の適応は、皮下輸液の補助、他剤の分散・吸収促進、皮下尿路造影です。フィラーの溶解はここに含まれていません。FDAの承認と日本の承認、そして承認された適応と実際の使い方は、それぞれ別に確認する必要があります。
BIOTOPE CLINIC 白金へのご相談
気になる症状・治療法は、形成外科専門医・苅部医師にカウンセリングでご相談ください。お一人おひとりの肌・お悩みに合わせて、最適な治療法をご提案いたします。
所在地: 東京都港区白金 / 監修: 苅部 淳 医師(形成外科専門医)
よくある質問
- Q. 動物由来とヒト遺伝子組換えで、アレルギーの起こりやすさはどのくらい違いますか
- 今回確認した米国の添付文書では、3製剤いずれも「アレルギー反応は0.1%未満に報告」と同じ記載でした。由来ごとに異なる発生率を示した公的資料は確認できていません。差を断定する数字は、現時点では見当たらないと理解してください。
- Q. 皮内テストを受ければ安全だと考えてよいですか
- AMPHADASEの添付文書には皮内テストの手順が記載されていますが、テスト陰性がその後の反応を否定するという記述はありません。過敏症は3製剤とも禁忌とされており、テストは判断材料のひとつという位置づけです。実施の可否と解釈は医師にご確認ください。
- Q. 国内メーカー製と書かれていれば、承認された薬という意味ですか
- 別の話です。製造元の所在国と、日本での薬事承認の有無は連動しません。未承認の医薬品を自由診療で使う場合、厚生労働省のガイドラインは未承認である旨と入手経路などの明示を求めています。表示が見当たらない場合は、直接たずねてください。
まとめ
ヒアルロニダーゼは、ヒツジ精巣、ウシ精巣、ヒト遺伝子組換えという3系統に分かれ、米国の添付文書ではいずれもアレルギー反応が0.1%未満と記載されています。由来だけで安全性の優劣を断定できる根拠は、今回確認した公的資料の中には見当たりませんでした。
「生化学工業のヒアルロニダーゼ」という表現については、同社が公開する製品一覧にヒアルロニダーゼ製剤の記載を確認できませんでした。企業名の印象ではなく、由来・国内承認状況・入手経路・救済制度の扱いという4点で確かめていくほうが、判断は確実になります。
気になる方はカウンセリングでご相談ください。BIOTOPE CLINIC 白金(港区白金)でもご相談いただけます。
References
- 厚生労働省『医療広告ガイドラインに関するQ&A』平成30年8月作成・平成30年10月改訂 出典
- 厚生労働省 医薬局監視指導・麻薬対策課『医薬品等を海外から購入しようとされる方へ(個人輸入において注意すべき医薬品等について)』 出典
- 日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会・日本美容外科学会(JSAPS)・日本美容外科学会(JSAS)『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』令和3年度厚生労働科学研究費補助金、2022年 出典
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)『医薬品副作用被害救済制度』 出典
- アルジェニクスジャパン株式会社『ヒフデュラ配合皮下注、ヒフデュラ配合皮下注シリンジに係る医薬品リスク管理計画書』(PMDA掲載)令和7年10月3日提出 出典
- U.S. Food and Drug Administration『VITRASE (hyaluronidase injection, ovine) Prescribing Information』Bausch & Lomb Incorporated、Revised 1/2024 出典
- Amphastar Pharmaceuticals, Inc.『AMPHADASE (hyaluronidase injection, USP) Prescribing Information』REV 02-18 出典
- DailyMed(U.S. National Library of Medicine)『HYLENEX recombinant (hyaluronidase human injection) Label』Halozyme, Inc.、Rev. 11/2024 出典
- 生化学工業株式会社『医療用医薬品・医療機器』製品情報 出典
- 生化学工業株式会社『医薬品原体』製品情報 出典
- 独立行政法人国民生活センター『美容医療サービス(各種相談の件数や傾向)』2026年7月31日更新 出典
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監修医師
苅部 淳
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