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Column美容コラム

  • お顔の治療

アクアフィリングの失敗・しこり・後遺症とリスク対処法

2026.06.04

アクアフィリング(非吸収性フィラー)の失敗・しこり・後遺症とは? リスクと対処法を医師監修で解説

「アクアフィリングを注入したあとにしこりができた」「除去したいけれど可能なの?」「後遺症が残ると聞いて不安…」。このような悩みや疑問を持って、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。 アクアフィリングはポリアクリルアミドハイドロゲルと呼ばれる合成素材を肌に注入するフィラー(充填剤)の一種です。かつて豊胸や顔の輪郭形成に広く用いられた時期もありましたが、現在は吸収されない素材の特性によるトラブル報告が多く、日本の美容医療の現場でも深刻な問題として認識されています。 この記事では、アクアフィリングとはどのような素材なのか、なぜ失敗・しこり・後遺症が起こりやすいのか、そして現在できる対処法と、安全な代替治療の選択肢まで、形成外科専門医の視点を交えて丁寧に解説します。
  • アクアフィリング(ポリアクリルアミドハイドロゲル)の特徴と体内での挙動
  • しこり・硬化・炎症などの後遺症が起こるメカニズム
  • 失敗・トラブルの主なパターンと見分け方
  • 除去・修正の現実的な方法と限界
  • 安全性の高い代替フィラー・施術との比較

アクアフィリングとは? 仕組みと特徴を知る

ポリアクリルアミドハイドロゲルとは

アクアフィリング(Aquafilling)は、主成分がポリアクリルアミドハイドロゲル(PAAG)と水分(約97.5〜98%)で構成されたジェル状の充填剤です。シリコン系インプラントや自家脂肪とは異なり、注射針で注入できる手軽さから、かつてはアジアや東欧を中心に胸・鼻・唇・ほうれい線など幅広い部位に使われてきた経緯があります。 最大の特徴は「体内に吸収されない(非吸収性)」であることです。ヒアルロン酸のような吸収性フィラーは時間とともに体内で分解されますが、アクアフィリングは半永久的に体内に残留する性質を持っています。この永続性が当初は「長持ちするフィラー」として売り文句にされていました。

なぜ現在は問題視されているのか

非吸収性という特徴は、裏を返せば「一度入れたら自然には消えない」ということを意味します。注入後に素材が移動(マイグレーション)したり、被膜が形成されたり、細菌が繁殖してバイオフィルムを形成したりするリスクが報告されており、国際的な医療機関や学術誌でも安全性への懸念が相次いで指摘されています。 韓国・EU圏では規制または使用禁止の措置が取られており、日本でも薬事承認を受けた製品ではないため、正規のルートで流通していない素材です。それでも過去に施術を受けた方からの相談が、当院の外来でも増加傾向にあります。

アクアフィリングの失敗・しこり・後遺症が起きるメカニズム

しこり(線維性被膜・肉芽腫)ができる理由

体内に異物が入ると、免疫系は異物を隔離しようとして周囲を線維組織で包もうとします。この反応が過剰になると「線維性被膜(カプセル)」や「肉芽腫(グラニュローマ)」と呼ばれるしこりが形成されることがあります。ポリアクリルアミドハイドロゲルはこの反応を引き起こしやすい素材とされており、注入後数ヶ月〜数年以上経過してからしこりが顕在化するケースも報告されています。 Plastic and Reconstructive Surgery誌などに掲載された複数の症例報告では、PAGAを注入した患者に硬結・炎症・膿瘍形成などが認められ、その多くで外科的除去が必要とされたと報告されています。

感染・バイオフィルム形成のリスク

アクアフィリングはゲル内部に細菌が定着しやすい構造を持つとされており、一度バイオフィルム(細菌の集合体)が形成されると、通常の抗菌薬が効きにくくなるケースがあります。注入直後ではなく、数年後に突然赤く腫れ上がる・痛みが出るといった「遅発性感染」のパターンが問題視されています。

素材の移動(マイグレーション)と変形

注入されたゲルは重力や筋肉の動きによって注入部位から少しずつ移動することがあります。顔への注入では、頰に入れたはずの素材がフェイスラインや顎下に垂れてきて輪郭が崩れるケースも報告されており、外見上の変化が大きなストレスとなることもあります。

具体的なトラブル・失敗パターン一覧

アクアフィリングに関連する主なトラブルを以下にまとめます。施術から時間が経って現れる症状も多いため、心当たりがある場合は早めに専門医に相談することが大切です。
  • 硬いしこり・ゴロゴロ感:皮膚の下に触れられるほどの硬結が生じる
  • 遅発性炎症・感染:赤み・腫れ・熱感・膿が突然現れる
  • 素材の移動による変形:入れた部位とは異なる場所で膨らみが生じる
  • 慢性的な疼痛・違和感:異物感が長期間続く
  • 皮膚の壊死・陥凹:血流障害や炎症が重篤化した場合に生じることがある
  • 精神的なストレス・QOL低下:外見の変化や除去への不安から

苅部医師のコメント

当院の外来で見ていると、「数年前に海外や他施設でアクアフィリングを注入したが、最近になってしこりや腫れが出てきた」というご相談が増えています。遅発性のトラブルは患者さんご自身もフィラーとの関係に気づきにくいことが多く、「ただの脂肪のかたまりかと思っていた」とおっしゃる方も少なくありません。気になる硬結や皮膚の変化がある場合は、まず専門医に診ていただくことを強くお勧めします。注入素材の特定と現状評価を行った上で、最適な対応を一緒に考えていきます。

よくある誤解と見落としがちなポイント

誤解①「水なのだから安全なはず」

アクアフィリングは製品名や「97%以上が水」という説明から、「ほぼ水分だから安全」と思われがちです。しかし、問題はポリアクリルアミドという合成ポリマー成分であり、モノマーとしてのアクリルアミドは神経毒性が指摘されている物質です。さらに重要なのは「体内で分解されない」という点であり、成分の水分率とは別に、長期的な組織への影響を考える必要があります。

誤解②「ヒアルロン酸と同じように溶かせる」

ヒアルロン酸フィラーはヒアルロニダーゼという酵素注射で溶解・除去できますが、アクアフィリング(ポリアクリルアミドハイドロゲル)はヒアルロニダーゼでは溶解できません。除去には外科的切除・吸引・洗浄が必要であり、解剖学的に複雑な部位や広範囲に及ぶ場合は完全除去が難しいこともあります。「注射で除去できます」と説明するクリニックがある場合は要注意です。

アクアフィリングの除去・修正:現実的な対処法と限界

外科的除去(切除・吸引)

アクアフィリングの除去は、外科的なアプローチが基本となります。ゲルが局在している場合は切開・摘出・洗浄によって取り除くことが可能なケースもありますが、素材が周囲組織に浸潤していたり、広範囲に拡散していたりすると、完全除去は難しいとされています。除去後に陥凹や変形が残ることもあるため、修正手術との組み合わせが必要になる場合もあります。

感染を伴う場合

感染・膿瘍を伴うケースでは、まずドレナージ(排膿)と抗菌薬治療を行い、炎症が落ち着いてから外科的除去に移行することが一般的です。感染状態のまま無理に手術を行うと傷の治癒が妨げられる可能性があるため、段階的な対応が求められます。術後経過観察で実感したのは、患者さんの状態に応じて丁寧に段階を踏むことが、最終的な仕上がりを大きく左右するということです。

除去後の修正・仕上げ

アクアフィリング除去後に容積の不足や形態の変化が生じた場合、安全な素材(吸収性ヒアルロン酸フィラーなど)を用いた補正を検討することがあります。また、皮膚のたるみが残存した場合はヒアルロン酸注射やHIFU(ハイフ)などを組み合わせた対応が一つの選択肢となることがあります。気になる方はカウンセリングでご相談ください。

安全な代替フィラー・施術との比較

アクアフィリングのようなトラブルを避けつつ、ボリュームアップや輪郭形成の効果を期待したい方には、安全性が確認された素材・施術を選ぶことが重要です。以下に代表的な選択肢を比較しています。
施術・素材 吸収性 主な効果 ダウンタイム 除去の可否 向いている方
アクアフィリング(PAAG) 非吸収(半永久) ボリュームアップ・輪郭形成 比較的少ない(初期) 困難(外科的除去が必要) 現在は推奨されない
ヒアルロン酸注射 吸収性(6〜18ヶ月程度) ほうれい線・輪郭補正・リップなど 軽度(内出血・腫れ数日) ヒアルロニダーゼで溶解可能 初めての方・安全性を重視する方
ボトックス注射 吸収性(3〜6ヶ月程度) 表情じわ・エラ・小顔 ほぼなし 効果は自然に消退 表情じわ・筋肉性たるみが気になる方
HIFU(ハイフ) 機器照射(注入なし) リフトアップ・たるみ改善 軽度(赤み・むくみ数日) 素材注入なし 切らずにリフトアップしたい方
Morpheus8(モフィウス8) 機器照射(注入なし) 肌質改善・引き締め・たるみ 赤み・腫れ数日〜1週間程度 素材注入なし 肌の内側からの改善を希望する方
当院では、ヒアルロン酸注射やボトックス注射のほか、HIFU(ハイフ)やMorpheus8(モフィウス8)といった機器治療も提供しています。「異物を体内に入れたくない」「自然な仕上がりを大切にしたい」という方にとって、機器治療は一つの有効な選択肢です。詳しくはカウンセリングでご相談いただけます。

アクアフィリング後に後遺症が出たときの受診の目安

以下のような症状が現れた場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、できるだけ早めに形成外科または美容皮膚科の専門医への相談をお勧めします。
  • 注入部位に触ると分かるほどの硬いしこりがある
  • 皮膚が赤く腫れている・熱を持っている・痛みがある
  • 注入した場所から素材が移動してきたように感じる
  • 皮膚の表面が青白く変色したり、陥凹してきた
  • 数年前の注入後、最近になって違和感が出てきた
実際の診療では、「何年も前のことだから相談していいか分からなかった」とためらって来院される方も多くいらっしゃいます。時間が経過していても診察・相談は可能ですので、遠慮なくご来院ください。

よくある質問

Q. アクアフィリングのしこりは自然に消えることはありますか?
アクアフィリングは非吸収性素材であるため、時間が経っても自然に分解・吸収される可能性は極めて低いとされています。しこりや硬結は放置することで炎症や感染を引き起こすリスクもあるため、症状がある場合は専門医の診察を受けることをお勧めします。
Q. アクアフィリングはヒアルロニダーゼで除去できますか?
できません。ヒアルロニダーゼはヒアルロン酸を分解する酵素であり、ポリアクリルアミドハイドロゲルには効果がありません。アクアフィリングの除去には外科的切除や吸引が必要であり、除去の難易度は注入量・部位・拡散の状態によって大きく異なります。まず専門医による画像診断を含む評価を受けることが重要です。
Q. アクアフィリングのトラブル後、ヒアルロン酸など別のフィラーを使うことはできますか?
アクアフィリングを除去・治療した後、炎症や感染が落ち着いた状態であれば、安全性の確認された吸収性フィラー(ヒアルロン酸など)を用いた修正を検討できる場合があります。ただし、状態・部位・個人差によって適切な時期や方法が異なるため、担当医と十分に相談した上で判断することが大切です。

まとめ

アクアフィリング(ポリアクリルアミドハイドロゲル)は、非吸収性という特性ゆえに、しこり・感染・素材の移動・変形といった深刻な後遺症をもたらすリスクが指摘されている素材です。症状は注入直後だけでなく、数年後に遅発性に現れることもあるため、心当たりのある方は現時点での状態を専門医に診ていただくことが最初のステップとなります。 また、将来的な輪郭形成やボリュームアップを希望される場合は、安全性が確認されたヒアルロン酸注射や、素材を体内に注入しないHIFU・Morpheus8などの機器治療を選択肢として検討されることをお勧めします。 アクアフィリングのトラブル・除去相談、代替治療のご検討など、気になることがございましたらカウンセリングでご相談ください。BIOTOPE CLINIC 白金(東京都港区白金)では、形成外科専門医が丁寧に状態を診察した上で、一人ひとりに合った対応方法をご提案しています。どうぞお気軽にご来院ください。

参考情報・出典

監修医師

苅部 淳 形成外科専門医・BIOTOPE CLINIC 白金 理事長

苅部 淳

Karibe Jun

理事長

略 歴

順天堂大学医学部卒業
東京大学附属病院形成外科 入局
埼玉医大総合医療センター 形成外科・美容外科 助教
山梨大学附属病院形成外科 助教・医局長
各病院での臨床経験を経て形成外科専門医取得
2019年 麹町皮ふ科・形成外科クリニック 開院(千代田区市ヶ谷)
2021年 BIOTOPE CLINIC 白金 開院(港区白金)

資 格

日本形成外科学会 形成外科専門医
日本抗加齢学会 専門医
日本医師会認定産業医
アラガン社 ボツリヌス注射・ヒアルロン酸 VST認定医

受 賞

東京大学形成外科 最優秀賞(2016年)
日本形成外科学会 優秀賞(2018年)
ASPS(アメリカ形成外科学会)優秀演題発表(2018年)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を保証するものではありません。気になる症状・お悩みがある場合は専門医にご相談ください。
参考:日本美容外科学会(JSAPS)日本皮膚科学会

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