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その不眠は更年期の症状かもしれません!めまいやホットフラッシュのほかにも悩みの多い更年期障害の症状と対処法
2022.11.22
女性であれば、避けては通れない更年期と更年期障害。
その言葉はよく耳にしますが、
実際にどんな症状が起きるのか、この不調は更年期障害なのかわからないことが多く
治療中の方も、いつまで続くのだろう、治るのだろうかと
不安になりますよね。
この記事では、つらい更年期障害の症状や治療法の紹介のほかに、自分でできる対処法なども紹介しています。
更年期障害についてのモヤモヤを解消して、1日でも早く快適に過ごせるようにしていきましょう。
更年期障害ってなんだろう?どうしてなるの?
人それぞれ症状が違って、謎の多い更年期障害。
まずは、更年期とはどんなもので、症状がどうして起こるのか知っていきましょう。
更年期と更年期障害
女性の体は、女性ホルモン「エストロゲン」が全身の器官に働きかけ、様々な調整が行なわれることで健康を維持しています。
このエストロゲンの分泌は40代から減少しはじめ、個人差はありますが、50歳前後で閉経を迎えます。
閉経の前後5年間の時期を「更年期」とよんでいます。
更年期前半、45歳頃には女性ホルモン、エストロゲンの分泌が急激に減ってしまいます。
厄介なのは、緩やかに減っていくのではなく、急激に減少してしまうこと。
エストロゲンが急激に減ることで、脳が混乱し、調整されていた機能がうまく働かなくなることで、体や心にさまざまな不調をもたらすのです。
更年期障害の症状はさまざまで、代表的なものだと汗が止まらない、ほてりなどのホットフラッシュといわれる症状、めまいや不眠症状、イライラが止まらないなど多岐にわたります。
更年期に、他の病気が原因ではなく、日常生活にまで影響を及ぼす症状に苦しめられている場合、それらは更年期障害とよばれ、治療を必要とします。
日によって悩まされる症状が異なる、複数の症状が重なるなど、対策やコントロールしにくいのも更年期障害の特徴です。
更年期障害は女性ホルモンの減少が主な原因にはなりますが、ストレスなどの心因的要因、環境や役割など社会的要因も大きく関係しているといわれています。
ちょうど更年期の頃、女性は家庭や職場での責任も重くなり、子育てや親の介護と仕事の両立や、夫婦間の問題、老後のことなど、頭を悩ませることも多く、多忙なうえにストレスの多い時期でもあります。
体の不調と、環境、ストレスや性格などの影響が重なり、更年期障害を発症します。症状の有無だけではなく、重さも人それぞれ異なるのは、原因が一つではなく複雑であるからこそなのです。
更年期症状のさまざまな症状は自律神経が影響しているから
私たちの体は、アクセルの役目をする「交感神経」とブレーキの役割をする「副交感神経」の二つの自律神経がバランスよく働くことで正常に機能します。
日中は交感神経が優位になることで、血液循環や代謝がよくなり活発に活動できます
そして、日中の疲れから回復させるために必要となるのが副交感神経です。
どちらも、体にとって欠かせない働きをしますが、どちらかが過度に優位になりすぎてしまうと、体内のバランスが乱れ、様々な不調を引き起こします。
自律神経のバランス乱れによる不調は、
寝不足の時や、病中病後、ストレスを感じる時に、なんとなく体が重いなど、
誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。
たいがいは生活習慣を見直して改善されますが、
更年期障害の場合は、自律神経の働きをスムーズにする役割の女性ホルモンが減少、かつ自分で補填することは難しいため、つらい症状が慢性的に続いていきます。
自律神経は脳の視床下部という場所でコントロールされています。女性ホルモンの分泌と同じく、自身の意思では調節できません。
自律神経の役割は重要で、体温調節、呼吸を始め、全身の組織や器官を支配しています。
だからこそ、更年期障害は症状がさまざまで、体のどこに出てもおかしくないのです。
生きるために、重要な働きを担う自律神経に影響を及ぼしてしまうことから、
更年期は体のバランスを崩しやすく、これまでなんともなかった日常的なストレスにも敏感になります。
どうか無理をせず、自分にあった治療法をみつけ、少しでも快適に更年期を過ごしましょうね。
若い女性や男性にも増えているホルモンバランスの乱れ
20代や30代の若い女性にも、ほてりや不眠、気持ちの落ち込みなど更年期障害と似たような症状が起こることがあります。
だいたいは、仕事や人間関係によるストレス、無理なダイエット、不規則な生活が原因で起こる自律神経失調症や生理前後のPMSなど、一時的な体調不良であることが多く、更年期障害とは似て非なるものです。
あくまでも更年期障害は、閉経に向けてホルモンの分泌が減り起こるものなので、40代未満で生理が正常であれば別の原因があると考えられます。
ただ、20代、30代でも早期閉経や早期卵巣不全など卵巣機能が低下、停止してしまう疾患や、バセドウ病など、異なる病気の早期発見につながるので、生理不順や気になる症状がある場合は医師に相談してみましょう。
更年期障害に悩む男性も報告されるようになりました。
男性も女性と同様にホルモン分泌が減少し自律神経の働きが低下することで、イライラしたり、疲労感、だるさ、慢性的な頭痛や腰痛などの症状が起こります。
女性が更年期にガクッと女性ホルモンの分泌が減少するのに対し、男性ホルモンの減少はゆっくりと進みます。そのため、初期症状に気付きにくく、長いこと疲労感を抱えながら過ごしている方も多く注意が必要です。
原因がわからない疲労感や、気分の落ち込みが長く続くようであれば、病院を受診し男性ホルモン「テストステロン」の分泌量を検査し、適切な治療を受けることがおすすめです。
また、若い女性、男性の更年期障害も、40〜50代女性の更年期障害と同じで、自律神経のバランスを整える事が大切です。
本記事で紹介する日常の過ごし方や対処法も参考にしてみてくださいね。
更年期障害の症状とは?
先述したように、自律神経と深い関わりのある更年期障害は、症状も多く、人によってあらわれる症状もその度合いもまちまちです。
病院を受診する際は、状況を説明することが改善の近道となります。
現在気になる症状のほかにも、気になる症状がないか確認してみてくださいね。
めまい・立ちくらみ・耳鳴り
年齢を重ねると、血管の収縮や拡張のコントロールが働きにくくなるものです。
更年期障害の症状として悩まされる方が多い症状ですが、実は、めまいや立ちくらみ、耳鳴りと更年期障害との関係については、まだはっきりわかっていません。
しかし、このような症状は自律神経と大きく関わりがあるため、
全身をコントロールする自律神経のバランスも崩れやすい更年期は、めまいや立ちくらみ、耳鳴りが起こりやすくなるのではないかと考えられています。
平衡機能に異常を示すめまいを前庭性めまいといい、
更年期障害のめまいのような平衡機能の異常がみられないめまいは非前庭性めまいと分類されます。
めまいの症状としては以下の種類があります。
・回転性めまい:周りの景色や自分がぐるぐるまわっている感覚のめまい
・動揺性めまい:足が地面についている感覚がなく、ふわふわと浮いているようなめまい
・失神性めまい:目の前が真っ暗になったり、血の気が引くめまい
めまいや立ちくらみが起きたら、すぐに近くの椅子に腰かけ、可能であれば横になり安静にして過ごしましょう。
耳鳴りも金属音のような高い音から、ブーンと低い音が耳の中だけでなく、頭の中で聞こえるという方もいるようです。
体を温めたり、めまいや立ちくらみをともなっていないなら、軽い運動をして全身の血流をよくすることでも和らいできます。
更年期頃のめまいは、メニエル病など違う病気が原因であることも考えられます。
嘔吐を伴うめまいなども、脳卒中など緊急の場合がありますので、まずは自己判断せず病院で診断を受けてくださいね。
ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)
体の中で急にスイッチが入ったかのように突然始まるホットフラッシュ。
決して空調が暑いわけではないのに、顔や頭だけほてり、滝のような汗が出ます。
睡眠中に起こると、汗で冷えた衣服が不快で何度も目覚めてしまい、不眠症の原因となることも。
場所や周囲の状況に関係なく起こる、ホットフラッシュは精神的に苦痛を感じている方も多くみられます。
対策として保冷剤を持ち歩き、症状が出た時に首周りを冷やすと緩和されます。
携帯できるハンディタイプの扇風機もおすすめです。
あらかじめ準備をしておくと、いつ起きるかわからない不安な気持ちも抑えることができますね。
更年期の対処法では、ホットフラッシュに効果が期待できるツボについてもお伝えしています。
ぜひ、試してみてくださいね。
冷え性、手足が冷たい
冷え性の女性は多いですよね。
更年期以前も冷え性だったが、更年期に入ってからさらに冷えを感じる方も多いようです。
これは更年期の自律神経のバランスの崩れが原因で体温調節がうまくいかない、血の巡りが悪くなることが関係しています。
加えて、加齢による基礎代謝や筋肉量の低下もあり、さらに冷えやすくなるのです。
冷えそのものの改善には、西洋医学での治療は難しく、東洋医学の漢方治療などが適しています。
また、肌着や靴下、レッグウォーマーで日頃から冷えないように対策をしたり、
冷えた手足が不快な場合はお湯につけて温めてあげることで快適に過ごせますよ。
疲れ・だるさ、倦怠感
体が重く朝起きるのがつらい、仕事が終わると疲れて動けない、体が思うように動かないなど、疲れや体のだるさは更年期の女性70%が抱える、代表的な更年期障害の症状です。
更年期障害による自律神経の乱れのほか、血行不良や睡眠障害が原因といえます。
また、現代女性は仕事や家事に忙しく疲れやすいうえに、休息の時間が十分とれていないのも悪影響です。
目に見えにくい症状であるがゆえ、家族に理解されにくく、無理して過ごしている女性も多いのですが、
更年期障害の疲れやだるさの症状は、休養してすぐ回復するものではなく、四六時中疲れを感じる慢性的なつらさであり、無理は禁物です。
その状態が続くことは、罪悪感を感じたり、何もできないと自分を責めたりして、精神的な不調を引き起こすことも。
疲れがひどくなる前に、ストレスの原因を排除したり、家事を家族にお願いしたりして、
体と心の負担を減らしていきましょう。
更年期障害と似た疲労感を伴う疾患もあります。
心不全は、血液の循環が悪くなることで疲れやすさを感じるといわれています。
倦怠感や疲れの症状に関しても更年期だからと決めつけず、
休養を取っても症状が改善しない、長引くという場合は、病院の受診も検討してください。
頭痛
更年期障害の症状による頭痛は、更年期のわりと早い時期に目立つ症状です。
頭痛の症状も、自律神経がうまく働かないことが関係しており、
脳内の血液の流れがわるくなったり、血管が拡張、収縮することで痛みを引き起こします。
更年期の頭痛は慢性的に続く事が多く、安静にしていれば自然に治ってしまうような頭痛とは異なります。
更年期の頭痛の症状としては、
頭全体がぎゅーっと締め付けられるような痛みの「緊張型頭痛」や、
頭の片側がズキンズキンと痛み、吐き気をともなうこともある「片頭痛」を訴える方が多いようです。
緊張型頭痛は首のコリや目の疲れから起こりやすいので、
疲れが溜まる前に、目を温めて血流を良くしたり、ストレッチをして首をほぐしてみましょう。
片頭痛は、日頃から強い光やニオイや刺激を避け、頭痛が起きたときは暗く静かな部屋で横になるとよいでしょう。
急激な強い痛みや、意識がもうろうとするなどの症状が出た場合は急を要することもあります。
慢性的な頭痛持ちの方こそ、いつもの様子と違和感がないか注意してくださいね。
吐き気
体に異常があるわけでもなく、悪いものを食べたわけでもないのに、
なんだか気持ちが悪い、胃腸の調子が悪いというのも更年期障害の症状のひとつなのです。
つわりのような気持ち悪さが続いたり、吐き気だけでなく嘔吐してしまう場合もあります。
これらの症状も、エストロゲンの分泌の減少により自律神経のバランスが乱れることが原因です。
症状のコントロールが難しいため、いつ吐き気が起こるかわからず精神的な不調を患う人もいます。
ホルモン補充療法や漢方療法が適していますが、なんとなく調子が悪い、胃がむかつくという時は吐き気に効くツボを押してあげることで楽になりますよ。
吐き気で治療を受けている場合も、差し込むような胃の痛みや、激しい嘔吐など、いつもの症状より強い症状をともなう時は、なにか違う病気の可能性も考えられます。
その場合、すぐに消化器内科を受診してください。
動悸・息切れ
スポーツのあとにする動悸とは異なり、
いつもならなんでもない瞬間や寝ている時に急に胸がドキドキする、少しの距離を歩いただけなのに息が切れてしまう、これらも更年期障害の症状です。
自律神経は脈や呼吸もコントロールしています。
他の症状と同じように、女性ホルモンの分泌の減少によって自律神経のバランスが崩れることが、更年期の動悸や息切れの症状にも影響しています。
脈拍が大きく、速くなる、息切れするだけでなく、ほてりやめまいもともなう場合もあります。
症状があらわれたら、まずは座って、ゆっくりと深呼吸しましょう。
呼吸が浅くなっているとパニックになりやすく、動悸が激しくなりがちです。
呼吸が苦しい時は、吸うことよりも長くゆっくり吐くことを意識しましょう。吐いた分の空気が自然と入ってきます。
ゆっくりと深呼吸を続けるうちに症状も気持ちも少しずつ落ち着いてきます。
胸が圧迫されるような症状は更年期障害の動悸や息切れとは異なります。
心臓の病気の心配がありますので、循環器内科や心臓血管外科を受診してください。
肩こり・腰痛
仕事でパソコンを使う方は慢性的に肩こりや腰痛の悩みを抱えているかもしれません。
肩こりや腰痛以外の更年期障害の症状を抱えている方は、肩こりや腰も更年期障害の影響を受けている可能性があります。
その場合、更年期障害の治療により緩和できます。
更年期は自律神経の機能の乱れにより、血液の循環が悪くなります。
その影響を受け、肩や背中、腰の筋力が衰え、重い頭や腕を支えるのが大きな負担になり、肩のコリや腰の痛みにつながるのです。
更年期障害の治療を受ける他にも、ストレッチをして体をほぐしたり、1時間に一度は立ち上がる・歩くなど、血流を良くするよう意識してみましょう。
また女性ホルモンの分泌減少は、閉経後の骨粗しょう症にも深い関係があります。
骨は吸収と形成を繰り返していますが、エストロゲンが低下すると骨の吸収を抑制できず骨の質量が減ってスカスカになってしまうのです。
骨が弱く折れやすくなることもあり、閉経後の腰痛にはさらに注意が必要です。
眠れない、眠りが浅い
体のほてり、熱くて眠れない、寝汗でパジャマが冷たくて目が覚めてしまう血管運動神経症状や、不安やうつなどの精神症状が原因で引き起こされます
眠りの不調は、寝付けない、夜中に何度も目が覚めてしまう、ぐっすり眠れた感じがしないなど、続くと日常生活のほか精神面にも不調をきたすようになります。
自律神経と睡眠には深い関係があります。
質の悪い睡眠は、自律神経の働きをさらに低下させ、それにより更年期の症状も発現しやすくなるという悪循環を生みます。
睡眠不足や不眠は、更年期障害のつらい状況が長引く原因となります。
更年期障害の症状はどれもつらいものですが、生きる上で欠かせない睡眠にも影響が出ている場合、その苦痛はさらに大きいことでしょう。
不眠症状を放っておくのは、他の病気の原因にもなりかねません。
日中もつらく感じる、長く不眠症状が続いているなら、一度睡眠外来を受診してみてくださいね。
不眠症状が解消され睡眠の質が改善されることで、更年期障害の症状の緩和が期待できますよ。
イライラ・不安
周囲からはなかなか理解を得られず、つらい思いをしている方も多いのが、イライラと不安といった精神的な症状です。
これらは突如はじまり、なかなか収まらず、コントロールできないことが特徴です。
更年期は子供の自立や結婚、自分自身も大きな病気を経験したり、両親の介護や死別といった大きな出来事が重なることがあり、喪失感や不安感にさいなまれやすい時期でもあります。
そこに更年期の自律神経の働きの低下も重なり、感情のコントロールが普段よりも難しい、つらいと感じてしまうのです。
感情の起伏が激しくなることで自己嫌悪になることや、イライラが続くことで疲労感を感じることもあります。
誰にも相談できずに悩みを抱えすぎていると、ストレスが溜まり自律神経の働きがさらに悪くなって悪循環です。
可能であれば、職場や家族に更年期の症状について話して、仕事や心の負担が減るように協力してもらうようにしましょう。
感じている不安感について、心療内科で専門医に聞いてもらうのも効果的です。
更年期は複数の症状が同時に起こることも、毎日症状が変わることもある
更年期障害は女性ホルモンと自律神経という全身に作用する働きの低下が原因ということもあり、様々な症状が重なって起こることはおかしくありません。
また、毎日違う症状があらわれ、次から次へと悩まされることも多くあります。
少し待てば落ち着く症状もあるとはいえ、つらいと感じるようであれば病院で診てもらうことをおすすめします。
ひとつひとつの症状をメモにとっておくと、診察もスムーズですよ。
また、他の病気が原因の場合もあるので、更年期だと安易に自己判断で対処する前に、病院を受診して正しい判断をしてもらいましょう。
更年期障害の治療
更年期障害であるかどうかは、どのように判断されるのでしょうか?
病院の診察では、「簡易更年期指数(SM)」という自己申告表を使用した問診と、血液検査をおこないます。
血液検査ではFSH、LHというホルモンの数値を調べ、月経の終わりや閉経が近づいているかどうかを知ることができます。
ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法(HRT)は女性ホルモン「エストロゲン」を必要最低限補う根本的な治療法です。
女性ホルモンの分泌減少が原因で起こる、更年期障害の症状に効果的です。
高齢期の女性に多い骨粗しょう症もホルモン補充療法が適しており、更年期以降の女性の健康にも欠かせない治療法となっています。
ホルモン補充療法には投与が簡単な経口剤と、
胃腸や肝臓に負担が少なくて済む貼付け剤や塗布剤などの経皮吸収型製剤があります。
投与法や組み合わせも複数あり、状態や女性特有の病気の有無などで医師の判断のうえ治療を進めていきます。
誰しも受けられる治療法ではなく、血圧や子宮、乳房、骨粗しょう症、心臓、甲状腺などの検査をおこない、ホルモン補充療法をしても問題ないか確認のうえ治療を開始します。
検査内容や範囲は、病院や医師の方針によって異なる場合があります。
漢方療法
まだ閉経していない、エストロゲンの数値が下がっていない場合は、ゆっくり体質を改善していく漢方療法を選択する方もいます。
知柏地黄丸(ちばくじおうがん):ホットフラッシュ、ほてり、口の渇き、だるさ
加味逍遥散(かみしょうようさん):のぼせ、イライラ、顔のほてり、無気力
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):手足の冷え、むくみ、めまい、生理不順
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血行が悪い、肩こり、下半身の冷え、顔のほてり
抑肝散陳皮半夏(よくかんさんちんぴはんげ):イライラ、不眠症、興奮し手が震える
対症療法
更年期障害の根本治療は女性ホルモンの分泌を補うホルモン補充療法が効果的だと先述しましたが、症状が強くつらいと感じる場合は、症状にあった対症療法が効果的です。
頭痛には頭痛薬の服用、冷えには足湯で体の内側から温めるなどがこれにあたります。
薬の飲み合わせや、自己判断では注意が必要な場合もありますので、
頭痛や不眠、精神的な不安やうつ症状など、専門医に相談し婦人科と並行し治療を進めていくと安心です。
プラセンタ注射
婦人科や美容皮膚科で受けられるプラセンタ注射は、
美容目的のイメージが強いですが、更年期障害の治療にも用いられることも多くあります。
プラセンタは胎盤(たいばん)のことで、胎児の成長を促進させるため、多くの成長因子を含んでいます。
自然治癒力を高めてくれるので、美肌効果のほか、体が回復しやすく疲労感の解消にも効果が感じられます。
また、内分泌の調整や自律神経調整作用にも効果があり、更年期障害の症状全般を緩和する効果が期待できるでしょう。
ホルモン補充療法までは考えていないけれど、更年期による不調が気になり始めた方は試してみる価値があるのではないでしょうか?
ちなみにこのプラセンタ注射、美容目的の場合は自費診療の対象ですが、更年期障害の治療が目的の場合は保険適用となります。
ひとつ注意点としては、一度でもプラセンタ注射を摂取した方は献血ができません。
プラセンタエキスは滅菌を徹底しているとはいえ、ヒト由来の成分のため、
現在の技術で確認しうる限界値以下のウイルス混入について、可能性が完全に否定できないのです。
しかし、これまで、注射によってヤコブ病などの病気やウイルスが伝播した例はありませんので、摂取することにそれほど心配はいりません。
最近よく耳にするエクオールとは?
女性ホルモンと似た働きがあると研究発表されたのが、
大豆イソフラボンに含まれるエクオールという成分です。
このエクオールという成分は更年期障害の症状の改善のほか、骨密度を維持したり、シミ・しわなどを防ぐ美肌効果もあるといわれています。
エクオールは大豆イソフラボンをもとに私たちの腸内でつくられます。
欧米人が20〜30%なのに対し、大豆を食べる習慣のある日本人は約50%がエクオールをつくることができます。
腸内でエクオールを産生できる方とできない方、その違いはなんでしょう。
それは、エクオール産生菌という腸内細菌の有無です。
大豆イソフラボンは代謝されることで、ダイゼインからエクオールという成分に変わりその効果を発揮します。
エクオール産生菌が無いと代謝を起こすことができず、ダイゼインのまま体に吸収されてしまうのです。
エクオール産生菌がない方は、大豆イソフラボンを積極的に摂取してもエクオールにならないのです。
ではどうしたらよいか、それはサプリメントでエクオールそのものを摂ればよいのです。
産生ができないだけであって、エクオールになってしまえば、産生できる方と同じように体内で働きます。
サプリメントなどからエクオールを1日10㎎摂取することで、更年期症状が緩和されるといわれています。
産生できる方も普段の食事で大豆製品を摂りながら、補助的にサプリメントを摂り入れると効果が期待できるようです。
自分でつくれる方にも、サプリメントで直接摂る方にも共通して言えるのが、
エクオールの働きを高めるためには、腸内環境を整えることが重要だということ。
腸内には、腸の働きを助けてくれる腸内細菌(腸内フローラ)が住んでいます。
善玉菌や悪玉菌など、その数は約120兆個!
悪玉菌が増えてしまうと、便秘や下痢などわかりやすいトラブルのほかにも、免疫が落ちてしまうことで病気にかかりやすくなります。
その状態ではせっかくのエクオールも効果を十分に発揮できません。
腸の本来の働きである「栄養や水分の吸収」を活かし、エクオールを働かせるためにも
善玉菌を増やし腸内環境を整えましょう。
善玉菌を整えるには、食生活が大切です。
善玉菌を多く含んでいる発酵食品や、腸内細菌のバランスを整える食物繊維を意識して食べましょう。
ぬか漬けや味噌汁、納豆、野菜、豆類、ひじきがおすすめですよ。
エクオールを産生できるかどうかは、尿中のエクオール量を測定する検査でわかります。
最近では、自宅にいながら受けられる検査キットも販売されています。
更年期障害の対処法
ホルモンバランスを整えるには自律神経の機能を正常に整える必要があります。
日々の生活の中で、自律神経を整えることで、女性ホルモンの影響を受けても負けない体づくりをしておきましょう!
食事:大豆製品が女性ホルモンと似たような働きがあるので積極的に摂り入れるのはよいことです。その成分をしっかり吸収するためにも、バランスの良い食事を心掛け、腸内環境を整えましょう。
おすすめは、主食、副菜、主菜、汁物でバランス良く栄養がとれる和食です。
旬の食材や、フルーツも積極的にとり、自然の力をいただきましょう。
睡眠:私たちの体は寝ている間に、1日の疲れをリセットするだけでなく、様々な調整や修復をおこなっています。質のよい睡眠がとれるように、入浴やストレッチを習慣にしてみてください。寝る前のスマホや深酒を避けることも大切です。
運動:適度な運動を習慣にしましょう。気持ちも影響を受けやすい更年期には30分程度の散歩がおすすめです。手軽に運動ができるほか、歩くことで思考がスッキリし心が軽くなることも自律神経によい影響を与えます。
鍼灸:東洋医学の鍼灸は冷えやだるさなどの症状の緩和だけでなく、体の気の巡りを整えるといわれています。ツボに細い針を刺入したり、もぐさを燃焼させて刺激を与えることで気の滞りを解消します。
更年期の症状の緩和にも効果はありますが、メンテナンスとして定期的に通うことをおすすめします。
ツボ:鍼灸と同様に東洋医学の考え方で、体の気の巡りを整えてくれます。
ツボを刺激することで症状を緩和させる効果があります。
更年期障害の症状があらわれた時に、自分でできる手軽さと安心感があります。
・三陰交(さんいんこう)
足の内側のくるぶしから指4本分のところにあるツボです。
女性の悩みに万能なツボで、ホルモンバランスを整え、冷えやホットフラッシュに効果的です。複数の症状にお悩みの方は、まずこのツボを刺激してみましょう。
・合谷(ごうこく)
親指と人差し指の付け根の間にあるツボです。生理前や更年期の精神的な症状の改善に期待ができます。このツボは万能で、ホットフラッシュの突然の発汗を抑えるのにも効果的です。
・関衝(かんしょう)
薬指の爪の下、小指寄りにあるツボです。ホルモンバランスを整えるほか、めまいに効果的なツボです。
・労宮(ろうきゅう)
手のひら中央のくぼみにあるツボです。吐き気や食欲不振に効果が期待できます。
・ツボの刺激の仕方
押しやすい指でゆっくりと圧を与え、痛すぎず気持ちいい強さで小さく円を描くように20回ほど刺激します。
固く痛いツボもありますが、繰り返し刺激することでほぐれていき、体調の変化も感じられるようになります。
更年期障害には性格が関係する!?なりやすい性格とは?
同じ状況でも、更年期障害にならない、症状があってもさほどつらいと感じない人がいるのも事実です。
傾向として楽観的な性格の方は更年期障害に悩みにくいようです。
あまり物事を重く考えないことや、ゆったりと安心した気持ちで過ごすことで自律神経が乱れにくく、症状が起こりにくいのかもしれませんね。
更年期障害になりやすいのはどんな性格でしょうか?
・神経質
・まじめで完璧主義
・心配性
・融通がきかない
・過去にこだわる、考えすぎる
・ネガティブに物事をとらえる
性格なので、他の側面から見ればよい点はもちろんあります。
しかし、性格や考え方によっては、自分自身を追い詰めストレスになってしまうこともあるのです。
ストレスはいずれ自律神経に悪影響をもたらします。
いつも考え事で頭がいっぱいだと、脳も心も疲れきってしまいますよね。
自分を追い込んでいると自覚のある方は、いつもより自分に優しい考え方を意識してみてもよいかもしれませんね。
ツライめまい、睡眠障害が原因かも?
更年期の症状で、多くの方を悩ませているのが、めまいと不眠症状です。
どちらも更年期の女性ホルモンの減少による、自律神経のバランスの乱れが大きく関わっています。
寝つきが悪い、よく眠れた感じがしないなどの不眠症状は、さらに自律神経のバランスを崩してしまい、結果、日中にめまいを引き起こしやすいというつらい状況にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
質のよい睡眠によって、自律神経を整えることは、更年期症状の緩和に効果的だといえます。
不眠症(睡眠障害)の症状が当てはまっていないかチェックしてみてください。
・入眠障害:体は疲れていて眠りたい気持ちはあるのに眠れない
ベッドに横になって、30分〜1時間以上経過しても寝付けない
・中途覚醒:夜中に何度も目が覚めてしまい寝付けない
・早期覚醒:起床時刻の2時間以上に目が覚め、再度寝付けなくなってしまう
・熟眠障害:睡眠時間はしっかり取れているにもかかわらず、眠りが浅く睡眠の質が悪い。
目覚めたときに眠れた感じがしない
睡眠不足や不眠症は疲れが取れないだけでなく、糖尿病をはじめとする生活習慣病も悪化させる原因にもなります。
睡眠の悩みは軽視されがちですが、健康に過ごすために質のよい睡眠は欠かせません。
不眠症状が出てきた場合は、睡眠外来で相談してみましょう。
心の症状をがまんしていませんか?
体の症状に気を取られて、イライラや不安な気持ちがあってもがまんしていませんか?
女性ホルモンが減少すると自律神経が乱れるので、うつ症状があらわれることがあります。
女性は1カ月に4回性格が変わるという話を聞いたことがありますよね。
ホルモンバランスの変化や、生理前後のPMS症状でもイライラしたり、気分が沈みがちになるというのは、更年期の女性は長く経験してきているのではないでしょうか?
その感覚で、今のつらさをがまんしているのであれば、それはとっても危険です。
これまでの月経によるホルモンバランスの乱れは、周期を過ぎれば落ち着いたかもしれません。
それは、女性ホルモンの分泌があったからこそなのです。
更年期は女性ホルモンの分泌が急激に減少しています。
体は思った以上に、その変化に影響を受けているのです。
明るい気分にする効果のある女性ホルモンの減少により、イライラしたり憂鬱な気分になるのは更年期特有の症状といってもよいでしょう
気持ちの問題だと軽視せずに、更年期障害の治療やカウンセリングを受けることで、
感情の起伏が落ち着き、今までのように過ごせるようになります。
また、すでに更年期障害の治療を受けているけれども、
心の症状がつらく感じるのであれば、心療内科で相談してみるのも解決策がみつかるかもしれません。
心の症状が更年期障害によるものなのかで合う治療法をみつけられますし、専門医に話を聞いてもらうことで安心し、心が軽くなることも更年期の他の症状の緩和にも効果的です。
病院紹介
当医院の睡眠外来では、更年期障害による不眠症状の治療をおこなっています。
睡眠外来というと不眠症を睡眠薬で治療するイメージをお持ちになる方も多くいらっしゃいますが
当院ではカウンセリングや栄養指導を行い、睡眠薬を使わない治療もしています。
また、心療内科では更年期障害による気分の落ち込み、抑うつの治療もおこなっています。
婦人科の医師もおりますので、更年期障害による不眠症状や精神症状にお悩みの方は、安心してご来院ください。
まとめ
女性にとって避けては通れない更年期障害。
わたしたちの体は体調の変化をきっかけに、今まで頑張ってきた自分を労う良いタイミングを与えてくれているのかもしれません。
更年期障害はいつか終わるものとわかっていても、40代から50代と仕事に家庭に忙しい女性にとって10年間は長すぎます。
医療の力を借りて、上手に付き合っていくことで貴重な10年間をもっと輝かせていきましょう。
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今野 裕之Konno Hiroyuki
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- 略 歴
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順天堂大学大学院卒業。老化予防・認知症予防に関する研究で博士号を取得。 日本大学附属板橋病院・薫風会山田病院などを経て2016年にブレインケアクリニック開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療に当たる。認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立、代表理事就任。2019年より現職。著書に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」、その他監修など多数。美咲クリニック顧問瞳美容研究所ドクター予防医療研究協会理事
- 専 門
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博士(医学)精神保健指定医日本精神神経学会精神科専門医日本精神神経学会認知症診療医日本抗加齢医学会専門医リコード法(米国発のアルツハイマー病の統合治療プログラム)認定医
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